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都奴臣

読み
つぬのおみ
ローマ字表記
Tsununoomi
登場箇所
孝元記
他文献の登場箇所
紀   雄略9年夏5月条
    天武13年(684)4月辛未(20日)条
    天武13年11月戊申朔条
    天武14年(685)5月辛未(26日)条
    天武14年9月戊午(15日)条
続紀  養老7年(723)正月丙子(10日)条
    天平4年(732)正月甲子(20日)条
    天平4年8月辛已(11日)条
    天平5年(733)12月庚申(27日)条
    天平20年(748)正月戊寅(7日)条
    天平宝字3年(759)6月庚戌(16日)条
    延暦8年(789)正月己酉(6日)条
    延暦8年正月己巳(26日)条
    延暦8年3月戊午(16日)条
    延暦8年8月辛巳(12日)条
    延暦9年(790)3月丙午(10日)条
後紀  延暦14年(795)閏7月丁未(13日)条
    延暦15年(796)12月12辛酉(4日)条
    延暦18年(799)9月辛亥(10日)条
    天長8年(831)10月庚午(6日)条
続後紀 承和7年(840)2月壬子(5日)条
    承和8年(841)正月癸巳(22日)条
    承和8年2月丁未(6日)条
文実  天安2年(858)正月庚子(7日)条
    天安2年2月戊辰(5日)条
    天安2年6月癸卯(14日)条
三実  貞観4年(862)2月11日庚戌条
万   3・0292-95
    8・1641
姓   左京皇別上
始祖
木角宿禰
小鹿火宿禰(紀)
紀角宿禰(姓)
後裔氏族
角朝臣
説明
 武内宿禰の後裔氏族のひとつ。周防国都濃郡を本拠地とする。都奴は角・都努・都濃とも書く。天武13年(684)に朝臣姓を賜った。『古事記』では、木角宿禰(武内宿禰の子)の後裔氏族として、木臣(紀臣)・坂本臣とともに名があげられている。始祖の「木角」という名からも明らかなように、木臣との間には堅固な結びつきが存在した。都奴臣の本拠地は瀬戸内海航路の要衝に位置しており、そこから対朝鮮外交で活躍した木臣との関係が生じたことが指摘されている。また『日本書紀』によれば、小鹿火宿禰が新羅遠征から帰国する途中、遠征軍で専横を極めた紀大磐宿禰とともに朝廷に仕えることは堪えられないとして、ひとり角国に留まって同地に居住することを望み、それを雄略天皇に許されたことによって角臣を称したという。これに対して『先代旧事本紀』巻10国造本紀は、仁徳天皇の時代に都怒足尼(木角宿禰)の子である田鳥足尼(田鳥宿禰)がはじめて都怒国造に定められたと伝える。延暦10年(791)に佐婆部首牛養らが改姓を申請した際、牛養は紀田鳥宿禰の孫の代に周防国から讃岐国へと移り住んだことを主張しており、『日本書紀』に収載されたものとは別に、基底となる祖先伝承があったことをうかがわせる。
 木臣との同族関係が瀬戸内海航路を介してのものであったとすれば、都奴臣の性格は基本的に地方豪族であったと考えられる。ただし天武13年(684)を初見として、中央官人として活動する都奴臣も散見することから、いずれかの段階で中央政界にも進出したらしい。天武13年に都努臣牛甘(牛飼)は遣新羅小使に任じられ、翌14年5月に多くの献物を携えて帰朝した。さらに牛甘はその4ヶ月後に東海使者となり、東海道の地方行政の巡察を命じられている。また養老7年(723)に従五位下に叙された角朝臣家主も、天平4年(732)に遣新羅使に任じられており、新羅外交とのかかわりの深さがうかがわれる。ただし中央官人としてはあまり振るわなかったらしく、天平20年(748)に道守、延暦8年(789)に筑紫麻呂、天長8年(831)に福人、天安2年(858)に清貞、女官では延暦8年に広江が叙爵に預かっているが、極位は道守の従五位上といずれも五位止まりであった。なお筑紫麻呂は延暦14年(795)に官物を着服した罪で武蔵介を免官されるも、翌年には内蔵助に任じられ、延暦18年(799)には上総介として国司の職に復帰している。免官された時点で勲六等を有しており、それ以前に蝦夷征討に従軍していた可能性が高い。また承和8年(841)に福人が周防守と鋳銭司長官に任じられているが、このとき鋳銭司は周防国に置かれていた。嘉祥元年(848)の長年大宝の発行に向けて、産銅から鋳銭までの一連の工程を強化する目的で、周防国に基盤をもつ都奴朝臣が両ポストに任じられた可能性が指摘されている。少なくともこの時期まで、在地における都奴朝臣の勢力は健在であったと推測できよう。
参考文献
日野昭「後裔氏族系譜の形成」(『日本古代氏族伝承の研究』永田文昌堂、1971年9月、初出1959年3月)
佐伯有清『新撰姓氏録の研究』考証篇、第1(吉川弘文館、1981年12月)
加藤謙吉「角氏の氏族的性格とその王権奉仕―両貫制という視点より見た」(新川登亀男編『日本古代史の方法と意義』勉誠出版、2018年1月)

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