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天之狭土神

読み
あめのさづちのかみ
ローマ字表記
Amenosazuchinokami
別名
-
登場箇所
上・国生み神生み
他の文献の登場箇所
旧 天之狭土神(陰陽本紀)
梗概
 伊耶那岐・伊耶那美二神の神生み段において、大山津見神と野椎神とが共に山・野に因って持ち別けて誕生した八神(天之狭土神・国之狭土神・天之狭霧神・国之狭霧神・天之闇戸神・国之闇戸神・大戸或子神・大戸或女神)の第一。
諸説
 この場面には「天之」「国之」で対偶をなす神名が連なっていて、天之狭土神は国之狭土神と対をなしている。「天之」「国之」は、対偶の神名を構成するための称に過ぎないとする説もあるが、具体的な場所を象徴すると見て、山・野と捉える説や、地上から突き出て天空に接する所(山頂や崖)・地上と捉える説などがある。また、「天」「国」の対応が、天神の命によって行われる、国生みから神生みへと続く展開の上に、天上と国土との連続性を保証しているとする説もある。
 「狭土」の読みは、「土」の字を「豆知(ヅチ)」と読ませる訓注があり、サヅチと読まれる。神名の名義は、サを神聖さを表わす接頭語、ヅチを土と解して、神聖な土の神と捉える説や、サを坂の意、ヅを助詞、チを尊称と解し、山と野との境界である坂を司る神と捉えて、「天之」「国之」の対照が坂における山と野との交渉を表しているとする説や、「天之」を天空に接する場所である山頂、サを「早」と取って初生の意、ヅチを土地と取り、山頂の初めて生じた土地の意と捉える説がある。
 同時に生まれた八神の連関は、土(天之狭土神・国之狭土神)から霧が立ち(天之狭霧神・国之狭霧神)、霧によって暗くなり(天之闇戸神・国之闇戸神)、暗くなって惑う(大戸或子神・大戸或女神)、などといったつながりに捉える説がある。また、大山津見神と野椎神との山野の境界神的な性格と関わって、その境界にまつわる大地の神格化のイメージを持つと見る説がある。
参考文献
山田孝雄『古事記上巻講義 一』(志波彦神社・塩釜神社古事記研究会編、1940年2月)
倉野憲司『古事記全註釈 第二巻 上巻篇(上)』(三省堂、1974年8月)
西郷信綱『古事記注釈 第一巻(ちくま学芸文庫)』(筑摩書房、2005年4月、初出1975年1月)
『古事記(新潮日本古典集成)』(西宮一民校注、新潮社、1979年6月)
『古事記(日本思想大系)』(青木和夫・石母田正・小林芳規・佐伯有清校注、岩波書店、1982年2月)
砂入恒夫「古事記に於ける「天之」に就いて」(『古事記年報』13、1969年12月)
小松英雄『国語史学基礎論(2006簡装版)』(笠間書院、2006年11月、1973年1月初版)第3章
野口武司「『古事記』神生みの段の左註「神參拾伍神」」(『古事記及び日本書紀の表記の研究』桜楓社、1978年3月、初出1974年6・8・10月)
青木周平「「神生み」段の表現」(『青木周平著作集 上巻 古事記の文学研究』おうふう、2015年3月、初出1991年5月)
西宮一民「「神参拾伍神」考」(『古事記の研究』おうふう、1993年10月、初出1992年4月)
毛利正守「古事記上巻、岐美二神共に生める「嶋・神参拾伍神」考」(『萬葉』144号、1992年9月)
戸谷高明「「持別而生神」」(『古事記の表現論的研究』新典社、2000年3月、初出1992年12月)
芦田狭依子「狭土の神と銅鐸集団」(『古代文化を考える』35、1998年3月)

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