器物データベース > 淤能碁呂島

【解説】国土の誕生と矛

イザナキ・イザナミによる国土生成の場面で重要な役割をはたすのが、天の沼矛である。古事記の編纂者は、この矛をどのようにイメージしていたのか。神と矛との関係は、古墳時代の五・六世紀まで遡る。東北地方最大の祭祀遺跡、建鉾山遺跡(福島県)や、国家祭祀の場となった宗像・沖ノ島祭祀遺跡(福岡県)など古代祭祀の遺跡では、鉄の矛が神への捧げ物として供えられていた。鉄製武器は、五世紀以降、神への貴重な捧げ物、幣帛(へいはく)の原形に含まれ、矛もその一つであった。天つ神から授けられた天の沼矛も、神に捧げられた鉄矛をイメージしていたはずで、矛と神・祭祀の関係は、現在も神社や祭礼で見ることができる「旗鉾」に受け継がれた。

イザナキ・イザナミの淤能碁呂島生成
(古事記学センター蔵『古事記絵伝』より)

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