器物データベース > 大国主神の国譲り

【解説】天の八十ひらかと火鑽杵

大国主神の国譲りでは、櫛八玉神が食膳を準備・調理し饗応する様子が語られる。五・六世紀の祭祀遺跡では、食膳を調理する瓠や柄杓(ひしゃく)、杵(きね)などの調理具の実物や模造品に加え、実用の火鑽臼(ひきりうす)が出土する例があり、櫛八玉神が食膳を準備する神話も五・六世紀以来の伝統を背景に持っている可能性は高い。ただし、五・六世紀の祭祀遺跡では須恵器・土師器の食器類を多く使い、祭祀用の手捏(てづくね)土器の形は椀に近い深手のものである。櫛八玉神が饗応のため粘土を焼いて用意した「八十ひらか」を「多くの平たい器」と解釈すると、五・六世紀代の祭祀遺跡から出土する土器類とは、やや異なる。「ひらか」の表現は、供膳の食器で扁平な杯が主体となっていく、七世紀後半以降の状況を反映しているのかもしれない。

鵜に変身した櫛八玉神
(古事記学センター蔵『古事記絵伝』より)

器物データベース トップへ戻る

先頭