器物データベース > 八俣のおろち退治

【解説】速須佐之男命の「十拳の剣」

「拳(つか)」とは、拳(こぶし)の大きさに当たる長さの単位で、約十センチ程度となる。つまり「十拳の剣」は長さ約一メートルに及ぶ長大な刀剣という意味になる。このような刀剣は、古墳時代の初期から存在した。例えば、東大寺山古墳(奈良県、四世紀の前方後円墳)から出土した鉄刀には全長一一〇センチの長大なものがあり、その棟には後漢の年号「中平□年(一八〇~一九〇)」で始まる銘文が刻まれていた。形は、石上神宮の禁足地から出土し、フツノミタマとされる鉄刀と同じ内反の刀である。宝鏡と同様に、神の刀剣のイメージの基には、古墳時代初期頃に日本列島にもたらされた大陸由来の優れた刀剣があったのだろう。

速須佐之男命の八俣のおろち退治
(古事記学センター蔵『古事記絵伝』より)

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