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辺疎神

読み
へざかるのかみ
ローマ字表記
Hezakarunokami
別名
-
登場箇所
上・みそぎ
他の文献の登場箇所
旧 辺疎神(陰陽本紀)
梗概
 伊耶那岐神の禊において、身に着けたものを脱ぐことによって化成した十二神のうち、投げ捨てた右手の手纏から辺津那芸佐毘古神・辺津甲斐弁羅神と共に化成した神。
諸説
 伊耶那岐神の禊において、投げ捨てた左手の手纏からは「奥」を冠する三神が、右手の手纏からは「辺」を冠する三神が成った。「辺」は海辺の意で、沖を意味する「奥」に対するものと理解される。サカルは「放る」「離る」の意で、遠くの意とし、浜辺を意味するナギサ、境界を意味するカヒベラに対して、遠くへ離れた所の意とされる。
 手纒から成ったこれら六神の位置付けとしては、同時に化生した十二神全体の関連から様々に考察されている。主な説としては、(1)前半六神が陸路、後半六神が水路を掌り、旅に関わる神々とする説、(2)黄泉国からの脱出に呼応する神々とする説、(3)邪悪なものを防塞し疫病を鎮める習俗の反映とする説、(4)流し遣った災厄や穢れ、あるいはそれを移した人形の神格化とする説、(5)黄泉国の穢れを除去する働きで、後半の六神は除去した穢れを最終的に海に捨て去ることを意味するものとする説、といったものがある。
 神話上の位置付けとしては、禊ぎ祓えの物語が、至高神天照大御神の出現の聖性の保証となる聖なる空間を作り出す叙述であり、これらの神はその役割を担ったものとする説がある。
 手纏から海の神が生まれたことについて、手纏は、真珠や貝殻で作るものであるから、海の連想を伴うためであるとか、原産地であるからとなど言われている。万葉集にも(15・3627)「玉の浦に 船を留めて 浜辺より 浦磯を見つつ …… 海神の 手巻の玉を 家づとに」と手纏が海神(わたつみ)にまつわるものとして詠まれている。
参考文献
倉野憲司『古事記全註釈 第二巻 上巻篇(上)』(三省堂、1974年8月)
西郷信綱『古事記注釈 第一巻(ちくま学芸文庫)』(筑摩書房、2005年4月)
『古事記(新潮日本古典集成)』(西宮一民校注、新潮社、1979年6月)
菅野雅雄「禊祓条の化生神」(『菅野雅雄著作集 第三巻 古事記論叢3 成立』おうふう、2004年5月、初出1975年3月)
井手至「古事記禊祓の神々」(『遊文録 説話民俗篇』和泉書院、2004年5月、初出1980年3月)
勝俣隆「伊邪那岐命の禊祓の段における時量師神の解釈について」(『古事記年報』39、1997年1月)
吉野政治「禊ぎの前に化成する神々」(『古事記年報』42、2000年1月)

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