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金山毘古神

読み
かなやまびこのかみ
ローマ字表記
Kanayamabikonokami
別名
-
登場箇所
上・国生み神生み
他の文献の登場箇所
紀 金山彦(五段一書四)
美濃風 金山彦神(逸▲)
旧 金山彦神(陰陽本紀)
神名式 金山孫神社(河内国大県郡)/仲山金山彦神社(美濃国不破郡)
梗概
 伊耶那美神が迦具土神を生み、陰部を焼かれて病み臥した際に生まれた神々(金山毘古神・金山毘売神・波邇夜須毘古神・波邇夜須毘売神・弥都波能売神・和久産巣日神)のうち、嘔吐(たぐり)によって生まれた神で、金山毘売神と対偶を為す男神。
諸説
 伊耶那美神が病み臥した際に嘔吐物・排泄物から生まれた神々の意義については主に、火山の噴火を表わすとする説、焼畑など農耕の反映とする説、五行思想の影響とする説、鎮火の伝承に由来するという説、香具山の祭祀に基づくとする説がある。『日本書紀』の各所伝との構想の相異も問題となり、それらの理解のしかたによって各神名の解釈にも幅が生じている。また、神生みの段で伊耶那岐神・伊耶那美神の生んだ神々の誕生が「生める」と表現されるのに対して、これらの神々は「成れる」として物から成ったことが示されており、二神が生んだ神々の数として示された「参拾伍神」の内には含まれないとする見方がある。ただし、金山毘古神・金山毘売神は、嘔吐物から成っているはずが「生」の字で表現されているのが問題とされ、これを「成」の字の誤りとみる説など、整合性が検討されている。
 「金山」の語について、天の石屋の段に「天の金山の鉄を取りて、鍛人の天津麻羅を求めて、伊斯許理度売命に科せ、鏡を作らしめ」とあるのが参考にされる。この「金山」は鉱山と解するのが一般的で、金山毘古神・金山毘売神の二神は鉱山の神と解する説が行われている。タグリ、嘔吐によって生まれることについては、鉱石を火で溶かした様子からの連想によるとする説や、食物が人の腹中で成り変ったものがタグリであると捉え、鉱石が火の力によって金属になることの表現とする説がある。
 この神の性格は、当該条の文脈や同時に生まれた神々全体の理解のしかたによって異なる解釈が導き出されている。(1)この神々の誕生を火山の噴火の表象と捉え、嘔吐が溶岩の流出を表して、その中に鉱石が存在することを金山の二神が表しているとする説。(2)鎮火祭に由来する神話と捉え、火を鎮める刀剣関連の神々が次に生まれてくるのに先立って、刀剣の材料としての鉄を表しているとする説。(3)金属の中でも生活に重要な鍬を司る神であるとする説。(4)誕生した神々がみな火の効用を表すと捉え、この神は冶金のための火の効用を表しているとする説。(5)この神々を、伊耶那美神の復活を祈る神招ぎの香具山祭祀における一連の呪具の神格化とし、天の石屋の段で呪具の材料の拠り所となる「天の金山」と対応した神名とみる説、などがある。
 『日本書紀』の一書には、「金山彦」が同様に嘔吐によって生まれているが、女神は現れていない。『新撰亀相記』には「金山彦、金山姫」とあって、「金神也。今鍫也」と注されている。
 『延喜式』神名帳・河内国大県郡に、「金山孫神社」(大阪府柏原市青谷、金山彦神社)と「金山孫女神社」(柏原市雁多尾畑、金山媛神社)が見える。採鉱・冶金の神、製鉄の神として祭られているが、両社のそば、雁多尾畑地区の上手の山からは鉄滓が発見されていることから、古代、この地域に製鉄の活動があったことが認められ、これらはその人々が祭った神社と考えられる。金山彦神社を祭った氏族については、大県郡鳥取鄕に居住した鳥取氏が鉄に関わりを持っていたと考え、その祭祀を行ったとする説がある。美濃国不破郡「仲山金山彦神社」は、崇神天皇の朝に府中から仲山の麓に遷されたと社記に伝わり、国府から南方に位置するゆえ「南宮神社」とも称した(現、南宮大社)。
参考文献
山田孝雄『古事記上巻講義 一』(志波彦神社・塩釜神社古事記研究会編、1940年2月)
倉野憲司『古事記全註釈 第二巻 上巻篇(上)』(三省堂、1974年8月)
西郷信綱『古事記注釈 第一巻(ちくま学芸文庫)』(筑摩書房、2005年4月、初出1975年1月)
『古事記(新潮日本古典集成)』(西宮一民校注、新潮社、1979年6月)
『式内社調査報告書 第四巻 京・畿内4』(式内社研究会編、皇学館大学出版部、1979年11月)
『式内社調査報告書 第十三巻 東山道2』(式内社研究会編、皇学館大学出版部、1986年2月)
虎尾俊哉『延喜式 上(訳注日本史料)』(集英社、2000年5月)
松岡静雄『記紀論究 神代篇 創世記』(同文舘、1931年2月)
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守屋俊彦「火神出生の神話」(『記紀神話論考』雄山閣、1973年5月、初出1955年1月)
安津素彦「国生みの段三十五神考」(『神道思想論叢』白帝社、1972年9月、初出1958年4月)
守屋俊彦「火神出生神話の序列」(『記紀神話論考』雄山閣、1973年5月、初出1965年9月)
野口武司「『古事記』神生みの段の左註「神參拾伍神」」(『古事記及び日本書紀の表記の研究』桜楓社、1978年3月、初出1974年6・8・10月)
毛利正守「古事記上巻、島・神生み段の「参拾伍神」について」(『国語国文』45巻10号、1976年10月)
菅野雅雄「豊宇気毘売神の出現」(『菅野雅雄著作集 第三巻 古事記論叢3 成立』おうふう、2004年5月、初出1977年6月)
大和岩雄「南宮大社―「南宮」の由来と金山彦神と壬申の乱」(『神社と古代民間祭祀』白水社、1989年6月)
大和岩雄「金山彦神社・金山姫神社―鉄と祭祀氏族」(『神社と古代民間祭祀』白水社、1989年6月)
西宮一民「「神参拾伍神」考」(『古事記の研究』おうふう、1993年10月、初出1992年4月)
毛利正守「古事記上巻、岐美二神共に生める「嶋・神参拾伍神」考」(『萬葉』144号、1992年9月)
青木周平「伊耶那美命化成の表現」(『青木周平著作集 上巻 古事記の文学研究』おうふう、2015年3月、初出1992年12月)

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