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甕主日子神

読み
みかぬしひこのかみ
ローマ字表記
Mikanushihikonokami
別名
-
登場箇所
上・大国主神の系譜
他の文献の登場箇所
-
梗概
 大国主神の系譜に見える。速甕之多気佐波夜遅奴美神が天之甕主神の娘の前玉比売を娶って生んだ子で、淤加美神の娘の比那良志毘売を娶って多比理岐志麻流美神を生んだ。
諸説
 甕主日子神は、父の速甕之多気佐波夜遅奴美神や、祖父にあたる甕主日子神とともに、甕にまつわる神と考えられる。神名の「甕主」の「甕」はミカと読まれ、水や酒を貯えたり、酒を醸す甕(かめ)のこととされ、神事用の甕を指すと解される。「主」は、ノ(助詞)ウシの約まった語とされる。ウシは、あるじとして領する者の意とされ、「甕主」は、神事用の重要な器としての甕を掌る意とする説がある。天之甕主神と甕主日子神とは神名が共通しているが、それぞれ天上界・地上界の甕の神と捉える説もある。
 また、大国主神の系譜中の「甕」のつく三神を、甕にまつわる氏族の信仰した神と捉える説もあり、甕主日子神という神名は、甕にまつわる首長の男子の意で、その氏族の祖神もしくは奉斎神としての尊称ではないかとする。
参考文献
西郷信綱『古事記注釈 第三巻(ちくま学芸文庫)』(筑摩書房、2005年8月、初出1976年4月)
倉野憲司『古事記全註釈 第三巻 上巻篇(中)』(三省堂、1976年6月)
『古事記(新潮日本古典集成)』(西宮一民校注、新潮社、1979年6月)
吉井巌「「ヌシ」を名に持つ神々」(『天皇の系譜と神話 二』塙書房、1976年6月、初出1972年1月)
肥田野昌之「ヌシ神をめぐって」(『上代日本文学の基盤』笠間書院、1973年12月、初出1972年3月)
溝口睦子「記紀神話解釈の一つのこころみ(中の二)―「神」を再検討する―」(『文学』42巻2号、1974年2月)
大和岩雄「三輪信仰とオホ氏」(『日本古代試論』大和書房、1974年7月)
菅野雅雄「神々の系譜」(『菅野雅雄著作集 第四巻 古事記論叢4 構想』おうふう、2004年7月、初出1982年9月)
菅野雅雄「須佐之男命の系譜」(『菅野雅雄著作集 第四巻 古事記論叢4 構想』おうふう、2004年7月、初出1984年3月)
姜鐘植「スサノヲ系譜「十七世神」について―系譜と説話の関わりという観点から―」(『井手至先生古稀記念論文集 国語国文学藻』和泉書院、1999年12月)
福島秋穗「八嶋士奴美神より遠津山岬多良斯神に至る神々の系譜について」(『紀記の神話伝説研究』同成社、2002年10月、初出2002年1月)
谷口雅博「『古事記』上巻・出雲系系譜記載の意義」(『日本神話をひらく「古事記」編纂一三〇〇年に寄せて―第九回:フェリス女学院大学日本文学国際会議―』、2013年3月)
中山陽介「「甕」を名に持つ神々について」(『古事記學』7号「『古事記』注釈」補注解説、2021年3月)

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