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菟田首

読み
うだのおびと
ローマ字表記
Udanoobito
登場箇所
清寧記・歌垣
他文献の登場箇所
-
始祖
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後裔氏族
-
説明
 大和国宇陀郡を本拠地とした氏族。『古事記』(以下『記』)においては、菟田首等の娘・大魚をめぐって意祁命(のちの仁賢天皇)と志毘臣の対立が顕在化し、志毘臣の誅殺につながるという物語が描かれている。これに対して、『日本書紀』(以下『紀』)で鮪臣(=志毘臣)と争うのは武烈天皇であり、菟田首大魚の役割は物部大連麁鹿火の娘・影媛が担っている。『紀』は影媛をめぐる争いの前段階に鮪臣の父である真鳥臣の専横を記述しており、その討滅までの過程も極めて政治的様相が強い。このような点から、志毘臣の物語は『記』に描かれる私的な争いが原型であり、それに政治的性格を付与して国家的事件として描いたのが『紀』であると考えられている。『紀』で鮪臣と真鳥臣を誅滅したのが大伴連金村であることから、『紀』の伝承は大伴氏の家記に由来するとの説も提示されている。菟田首の活動は他文献から確認できず、おそらく『紀』が編纂された8世紀までに衰退していたため、菟田首にかかわる大魚の伝承が削除されることは問題とならなかったのだろう。宇陀地域は斑鳩宮や忍坂宮などの諸宮と密接な関係をもち、飲食物の供給などを通じて諸宮の経営・維持に貢献していたことが指摘されており、菟田首もその小首長集団のひとつであったと考えられる。なお『新撰姓氏録』には膳臣や阿倍朝臣と同祖とされる「宇太臣」がみえるが、菟田首との関係は不明である。
参考文献
日野昭「後裔氏族の伝承」(『日本古代氏族伝承の研究』永田文昌堂、1971年9月、初出1959年3月)
辰巳和弘「平群氏に関する基礎的考察」(『地域王権の古代学』白水社、1994年6月、初出1972年8月・11月)
笹川尚紀「『日本書紀』の編纂と大伴氏の伝承」(『日本書紀成立史攷』塙書房、2016年3月、初出2012年8月)
新川登亀男「宇陀地域の生活・生業と上宮王家―菟田諸石を手がかりとして―」(『アジア遊学』199、2016年8月)

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