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天迦久神

読み
あめのかくのかみ
ローマ字表記
Amenokakunokami
別名
-
登場箇所
上・建御雷神の派遣
他の文献の登場箇所
旧 天迦具神(天神本紀)
梗概
 葦原中国平定の第三の使者に推挙された伊都之尾羽張神(天之尾羽張)のもとに派遣された神。伊都之尾羽張神は、天安河の河上の天石屋にいたが、逆さまに天安河の水をせきあげて道を塞いでいるため、他の神ではその神のもとに出向くことができないので、天迦久神が遣わされることとなった。
諸説
 名義は、「天之」は高天原と関係することを表しているとされるが、「迦久」の解釈には諸説ある。この神を刀剣にまつわる神と捉えて、剣で撃つ意のカクという動詞とする説や、輝く意で刀剣の輝きを表すとする説、また、鹿児(かこ)の転じた語で、鹿の神と捉え、水を飛び越えることのできる鹿の跳躍力、もしくは鹿が泳ぎを得意とすることによる命名とする説、水手(かこ)すなわち船頭の意とする説などがある。
 鹿が水を渡ることを得意とすることは、『摂津国風土記』逸文(雄伴郡)『播磨国風土記』飾磨郡などにも描写されている。また、『日本書紀』応神天皇十三年九月条には、角のついた鹿の皮を着た人々が海を泳ぐ描写が見えるが、これを外国に見られる鹿の装いをしたシャーマンと同類と捉えた上で、天迦久神は、水を泳いだり異界を超える能力に長け、呪力を以て伊都之尾羽張神との交渉にあたることができた、鹿の装いのシャーマンの神とする説もある。
参考文献
西郷信綱『古事記注釈 第三巻(ちくま学芸文庫)』(筑摩書房、2005年8月、初出1976年4月)
倉野憲司『古事記全註釈 第四巻 上巻篇(下)』(三省堂、1977年2月)
『古事記(新潮日本古典集成)』(西宮一民校注、新潮社、1979年6月)
松村武雄『日本神話の研究 第三巻』(培風館、1955年11月)第十章
金子武雄「国家譲渡の交渉」(『古事記神話の構成』南雲堂桜楓社、1963年10月)
池田源太「古墳築造に関する古代人の情緒」(『橿原考古学研究所論集 第五』吉川弘文館、1979年9月)
大林太良・吉田敦彦『剣の神・剣の英雄 タケミカヅチ神話の比較研究』(法政大学出版局、1981年9月)
山口博「ユーラシア北方文化の中の日本神話⑦ 環濠を構え石窟に住む神、イツノヲハバリ(前編) 」(『聖徳大学言語文化研究所論叢』18、2011年3月)
山口博「ユーラシア北方文化の中の日本神話⑧ 環濠を構え石窟に住む神、イツノヲハバリ(後編) 」(『聖徳大学言語文化研究所論叢』19、2012年3月)

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