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秋山之下氷壮夫

読み
あきやまのしたひをとこ/あきやまのしたひおとこ
ローマ字表記
Akiyamanoshitahiotoko
別名
-
登場箇所
応神記・秋山の神と春山の神
他の文献の登場箇所
-
梗概
 誰も結婚することができなかった伊豆志袁登売神を、弟である春山之霞壮夫に得ることができるかと問い、手に入れることができたら衣服を渡し、饗応することを誓う。春山之霞壮夫が伊豆志袁登売神を手に入れた際、約束を守らなかったため呪詛をかけられて病気になる。
諸説
 シタヒは他に「金山舌日下」(万10・二二三九)という例、「秋山下部留妹」(万2・二一七)という例があり、「氷」「日」はともに甲類の清音。したがって四段活用動詞「シタフ」の連用形が名詞化したものと解される。赤く色づく意であり、秋になって山が紅葉する様を男に擬人化したもの。このような神が兄にあてられているのは、ものが成熟する秋を年経た兄にあてたためだという。
 この神は神格そのものの考察よりもむしろ物語のモチーフやなぜ応神記末尾に置かれているのかという文脈上の意義を問う論が多い。前者に関しては、藤の花への美的興味を指摘する説や、妻争い・末子成功譚・丹塗矢説話との関連など類似モチーフの指摘がある一方で、それらとの相違を重視し、当該物語の作為性を指摘する論もある。また後者は、上巻の海幸彦・山幸彦神話と共通する構造を持つ話を置くことによって中巻のとじ目としたと論じる説、春秋の対比から四時運行を司る天皇の治世との関わりを論じる説、仁徳天皇へつながる徳のあり方を見て取る説、約束の履行という面から天皇の御代の規範的要素を指摘する説などがある。
参考文献
倉野憲司「秋山之下氷壮夫と春山之霞壮夫 」(『むらさき』1巻8号、1934年12月)武田祐吉「春山の霞壮夫 」(『国文学 解釈と鑑賞』4巻12号、1939年12月)
神田秀夫「天之日矛」(『国語国文』29巻2号、1960年2月)
吉永登「海を渡って来た神」(『国文学 解釈と教材の研究』13巻14号、1968年11月)
深沢忠孝「伊豆志袁登売物語―神婚説話の文芸性―」(『日本文芸論攷』5号、1978年5月)
阪下圭八「天之日矛之物語(二)」(『東京経済大学人文学論集』66号、1984年3月、のち改稿して『古事記の語り口ー起源・命名・神話』笠間書院、2002年4月所収)
寺田恵子「秋山之下氷壮夫・春山之霞壮夫の物語」(『古事記・日本書紀論集(神田秀夫先生喜寿記念)』続群書類従完成会、1989年12月)
長野一雄「神話の規範と秋山之下氷壮夫の物語」(『徳島文理大学文学論叢』9号、1992年3月)
飯村高宏「兄弟相剋の神話と否定される〈末子〉―秋山下氷壮士と春山之霞壮士伝承をめぐって ―」(『二松学舎大学人文論叢』57号、1996年10月)
城崎陽子「春山之霞壮夫と秋山之下氷壮夫の物語―季節観の享受を視点として」(『野州国文学』63号、1999年3月)
大脇由紀子「秋山之下氷壮夫と春山之霞壮夫―『古事記』の構造論として」(『中京国文学』18号、1999年3月)
中村啓信「秋山之下氷壮夫と春山之霞壮夫説話の構成」(『國學院大學大学院紀要(文学研究科)』31号、2000年3月)
前川晴美「『秋山之下氷壮夫と春山之霞壮夫』物語の意義」(『古事記年報』47号、2005年1月)
藤沢友祥「秋山之下氷壮夫と春山之霞壮夫―神話の機能と『古事記』の時間軸」(『早稲田大学大学院文学研究科紀要(第3分冊)』54号、2009年2月)
烏谷知子「『春山之霞壮夫と秋山之下氷壮夫』の物語の意義」(『学苑』867号、2013年1月)

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