國學院大学 「古典文化学」事業
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久々年神
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久々年神
読み
くくとしのかみ
ローマ字表記
Kukutoshinokami
別名
-
登場箇所
上・大年神の系譜
他の文献の登場箇所
旧 冬年神(地祇本紀)
梗概
大年神の系譜中に見える。羽山戸神が大気都比売神を娶って生んだ、八神(若山咋神・若年神・若沙那売神・弥豆麻岐神・夏高津日神・秋毘売神・久々年神・久々紀若室葛根神)のうちの第七。
諸説
大年神の系譜中の神々については、農耕や土地にまつわる神を中心としたものと捉えられ、民間信仰に基づく神々とする説や、大国主神の支配する時間・空間の神格化とする説がある。渡来系の神々が含まれているところには、渡来系氏族の秦氏の関わりが指摘されている。また、この系譜の、須佐之男命・大国主神の系譜から接続される本文上の位置に不自然さが指摘されており、その成立や構造について、秦氏の関与や編纂者の政治的意図が論じられている。一方、『古事記』全体の構成からこの位置に必然性を認める説もある。
大年神の系譜中に羽山戸神の子孫の系譜が派生して特立されているが、その系譜には何らかの特別な意義があると考えられる。この神々の性格は、耕作から収穫までの一年の農耕の模様を意味する神々であるという説があり、その名義や誕生の順序を農耕の次第の反映として捉える解釈が試みられている。また、本来はそれぞれ成立背景を異にする神々であったのが、新嘗祭を背景に統合化されたものとする説がある。
久々年神の名義は、ククは久々能智神のククと同じく茎で、草木の茎幹とする説がある。トシは、稲のこと、もしくは「足(た)し」の交替形で、よく伸びることの意と捉えて、稲のすくすくと成長する様を表わすとする説や、茎立った稲の意で、稲がらがしゃんと立つことを表わし、稲穂の豊穣の表象とする説がある。また、ククを、岐美二神の神生みで生まれた久々能智神や大殿祭祝詞に見える木霊、屋船久久遅神から、木の霊のこととし、穂掛け(刈り入れに先だって一番良い稲を抜き取って神に供える行事)に用いる木を表わすとし、刈って木に掛けられた穀霊の神とする説がある。
参考文献
倉野憲司『古事記全註釈 第三巻 上巻篇(中)』(三省堂、1976年6月)
西郷信綱『古事記注釈 第三巻(ちくま学芸文庫)』(筑摩書房、2005年8月、初出1976年4月)
『古事記(新潮日本古典集成)』(西宮一民校注、新潮社、1979年6月)
三谷栄一『日本文学の民俗学的研究』(有精堂、1960年7月)
日野昭「穀物神と土地神―大年神の系譜について―」(『仏教文化研究所紀要』(龍谷大学)18集、1979年6月)
上田正昭「大年神の系譜」(『古代伝承史の研究』塙書房、1991年5月、初出1980年4月)
軍司洋二「古事記・大年神神裔条の儀礼的背景」(『國學院大學大学院文学研究科論集』13号、1986年3月)
福島秋穗「「大年神と其の子孫に関わる記事」をめぐって」(『紀記の神話伝説研究』同成社、2002年10月、初出1995年10月)
志水義夫「大年神系譜の考察」(『古事記生成の研究』おうふう、2004年5月、初出1997年10月)
久々紀若室葛根神
久々能智神
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