國學院大学 「古典文化学」事業
MENU
Language
日本語
お問合せ
検索
國學院大學
SNS
本事業について
古事記について
古典籍ビューアー
成果公開
古事記研究データ
古典学総合データベース
お問合せ
検索
プライバシーポリシー
國學院大學公式ウェブサイト
トップページ
古事記研究データ
地名データベース
淡島(その1)
地名データベース
このDBは
古事記ビューアー
と連動しています
地名データベース凡例
淡島(その1)
読み
あはしま/あわしま
ローマ字表記
Awashima
登場箇所
上巻・国生み神生み、仁徳記・天皇と黒日売
住所
和歌山県和歌山市加太
地図を表示
緯度/経度
北緯 34°17'20.0"
東経 135°00'49.5"
説明
伊耶那岐命と伊耶那美命が国生みの際に生んだ島。また仁徳記の歌謡(53番歌)にも同名の島が登場する。国生みの場合、同時に生んだ水蛭子同様、「子の例には入れず」と記される。このことから、生み損じの子・二神が生もうとした国土たりえない存在であるとされる。また仁徳記の用例は、仁徳天皇が吉備の海部直の娘である黒比売を召し上げて使っていたものの、黒比売は皇后の嫉妬を恐れて故郷へと帰ってしまい、その黒比売を追って天皇が淡道島に行幸した際に詠んだ国見歌に「おしてるや 難波の崎よ 出で立ちて わが国見れば 淡島(阿波志摩) 自凝島(淤能碁呂島) 檳榔の 島も見ゆ 佐気都島見ゆ」と「自凝島」と共に「淡島」が現れる。
「淡島」の名義については「淡」を「沫」と解釈して沫のような頼りない島とする説、実体のない島と解釈する説、ぐじゃぐじゃとして固まらない島と解釈する説、親神である伊耶那岐命・伊耶那美命がこの島を「アハメ(淡)ニク(悪)」んだためにこの名がついたとする説、「淡」を「粟」と解釈し「豊饒の島」とする説などがある。
上記のように、水蛭子と共に「子の例には入れず」と表現されることから、生み損じの子として解釈される場合がある。しかし、淡島は水蛭子のように流されることはなく、「島」と表現されている。このことから、淡島はかろうじて島の体をなしており、国生みの成功に向けて一段階進んでいると見なす論もある。再度国生みを試みて無事大八島国を生んだ際、最初に生んだ島が淡道之穂狭別島であったことは、あらかじめ淡島を生んでいたことによって成功した結果であるという。
また仁徳記歌謡の「阿波志摩」を国生みに登場する「淡島」と同様に捉えるか否かにも諸説あり、歌謡の中では肯定的に歌われていることから、子の例として数えないとされた国生みの「淡島」ではなく、豊穣の島としての「淡島」とする説がある。『日本書紀』巻第一神代上第八段一書第六に、大己貴神と共に国を作った少彦名命が、「淡島」に至って粟茎に弾かれて常世国に渡ったという記事から、常世の国を背後に持つ豊穣の島としての「淡島」を認め、国生み神話の発達に伴い、子の例として数えないような「淡島」へと没落したという。この豊穣の島としての「淡島」は「粟島」の意味であり、「粟」が名称の核であるとする説もある。
比定地については淡路島周辺の小島とする説が多い。和歌山県和歌山市加太の友ヶ島(沖ノ島と地ノ島、神島などの群島から成る)とする説、四国の阿波方面とする説、淡島を島に近いながらも島と呼ぶには足りないものとして理解しサンゴ礁や暗礁などを想定して兵庫県林崎沖の微小島群とする説などがある。対して、現実のどの島かに具体的に比定するのではなく、淡島は神話上・観念上の空想の島と解釈する説、「淡」なる島が生まれたという文脈が重要であるとする説もある。
本項で掲げた和歌山県和歌山市加太の神島は、淡島の比定地の一つである。祭神は少彦名命とされる。また、淡嶋神社(同じく和歌山市加太)の旧鎮座地であるとされる。仁徳天皇の御代の行幸の際に神島から現鎮座地へと遷座したと伝えられる。上述した『日本書紀』で少彦名命が至った「淡島」ともされる。神島に渡航することはできないが、友ヶ島内の遥拝所よりその姿を望むことができる。
URL
備考
本居宣長『古事記伝』(『本居宣長全集 第九巻』筑摩書店、1968年7月)
吉田東伍『大日本地名辞書 上巻(第二版)』(富山房、1907年10月)
宮坂光次「蛭児説話の起因と其変遷」(加藤玄智編『日本文化史論纂』中文館書店、1937年11月)
中島悦次『古事記評釈』(山海堂出版部、1930年4月)
山田孝雄『古事記上巻講義 一』(志波彦神社・塩竈神社古事記研究会、1940年2月)
松村武雄『日本神話の研究 第二巻』(培風館、1955年1月)
倉野憲司『古事記大成6 本文編』(平凡社、1957年10月)
山川振作「記紀「国生み」神話の考察―特に古事記の水蛭子・淡島について―」(『東京大学教養学部比較文化研究』5号、1964年3月)
山川振作「古事記「国生み」神話補考」(『東京大学教養学部比較文化研究』6号、1965年昭3月)
倉野憲司『古事記全注釈 第二巻 上巻編(上)』(三省堂、1974年)
中西進『万葉集原論』(桜風社、1976年5月)
武田祐吉(訳注)・中村啓信(補訂解説)『新訂 古事記』(角川書店、1977年8月)
和田嘉寿男「粟島を背向に見つつ」(武庫川女子大学文学部国文学科編『阪神間の文学』和泉書院、1998年1月)
神野志隆光・山口佳紀『古事記注解2』(笠間書院、1993年6月8月)
沖森卓也・佐藤信・矢嶋泉編著『古代氏文集』(山川出版社、2012年4月)
青木周平「〈国見〉と〈国生み〉」(〈青木周平著作集 中巻 古代の歌と散文の研究』おうふう、2015年11月)
青木周平「淡島と淤能碁呂島」(『青木周平著作集 中巻 古代の歌と散文の研究』おうふう、2015年11月)
谷口雅博「仁徳記53番歌と国生み神話」(『季刊悠久』146号、2016年9月)
阿波岐原
淡島(その2)
地名データベース トップへ戻る
先頭