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科野之坂

読み
しなののさか
ローマ字表記
Shinanonosaka
登場箇所
景行記・美夜受比売
住所
岐阜県中津川市神坂 地図を表示
緯度/経度
北緯 35°28'19.4"
東経 137°37'53.7"
説明
 美濃国と信濃国の境にある、東山道の難所。現在の長野県下伊那郡阿智村智里と岐阜県中津川市神坂の間の神坂峠にあたる。
 景行天皇条に、倭建命が服従させた科野之坂神が登場する。『日本書紀』では、「信濃坂を度る者、多に神の気を得て瘼え臥せり」という往古の険路であったが、日本武尊(=倭建命)がその山の神を殺して以降、蒜を噛んで人や牛馬に塗ることで神の気に当たらなくなった、と伝えている。しかし、後代もなお、山路の遠く険しいことは往還の人々を苦しめた。一日で越えることができないにもかかわらず宿も無いため、最澄が広済院・広拯院を置いたこと(叡山大師伝)や、冬季などには死者も多く出ることから、駅子の租調の免除が施されたこと(類聚三代格)が、文献に見える。
 『万葉集』の防人らの歌の中に、信濃国埴科郡の神人部子忍男の詠んだ「ちはやふる 神のみ坂に 幣奉り 斎ふ命は 母父がため」(巻20・4402)という歌が収められている。山頂などに古墳時代以来の祭祀遺跡が見つかっており(神坂峠遺跡)、峠越えをした人々が安全祈願したものなどと解釈されている。
 地図に示した神坂神社は、信濃国側の山中に鎮座する神社である。
URL
備考
本居宣長『古事記伝』28(『本居宣長全集 第11巻』筑摩書房、1969年3月)
平凡社地方資料センター(編)『長野県の地名』(日本歴史地名大系20、平凡社、1979年11月)
「角川日本地名大辞典」編纂委員会(編)『角川日本地名大辞典 21 岐阜県』(角川書店、1980年9月)
平凡社地方資料センター(編)『岐阜県の地名』(日本歴史地名大系21、平凡社、1989年7月)
「角川日本地名大辞典」編纂委員会(編)『角川日本地名大辞典 20 長野県』(角川書店、1990年7月)
市澤英利『東山道の峠の祭祀・神坂峠遺跡』(シリーズ「遺跡を学ぶ」044、新泉社、2008年3月)
市澤英利・荒井秀規(編)『古代の坂と堺』(古代東国の考古学4、高志書院、2017年5月)

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