令和6年度 公開研究会「木村正辞と万葉集研究」を開催しました 2025.02.25 シェア Tweet 令和6年2月16日に國學院大學渋谷キャンパス5号館5301教室で、令和6年度研究開発推進機構公開研究会「木村正辞と万葉集研究」を開催しました。本研究会は研究開発推進機構(研究開発推進センター)の主催するもので、本学と関わりある国学者である木村正辞の『万葉集』研究を中心に、研究開発推進機構の共同研究員でもある大沼宜規先生(国立国会図書館司書)、大谷歩先生(天理大学人文学部講師)の2名から報告されました。 大沼先生は「木村正辞の活動とその基盤―主として幕末期に着目して―」とし、木村正辞の生涯・研究、そして彼の蔵書に注目した報告がされました。木村正辞について幕末期~明治後期までの研究・公務・教育という点から検討され、幕末期から『万葉集』を含めて広く古代文献について研究していたこと、明治前期には官吏として活動することになり、明治中期には多くの大学での教育活動が中心となったことが述べられました。また、木村正辞の研究では、文献目録の作成・諸本研究・用例収集・索引の編集・先行研究・論考化というシステマティックな研究方法が確立していたことを指摘されました。さらに、善本や校本などを重視して数多収集、そして、蔵書の共有していくことを進め、近代の人文学の基盤になっていると論じられました。 大谷先生は「木村正辞の万葉学―「三辨證」の形成と『万葉集美夫君志』への展開をめぐって―」として、木村の著作である「三辨證」(=『万葉集文字辨證』『万葉集訓義辨證』『万葉集字音辨證』)と『万葉集美夫君志』を中心に報告されました。「三辨證」の諸本を比較しながら、『美夫君志』への収載状況や、彼の万葉学の継承・展開などの検討を通して、木村の万葉学は現在でも評価される点が多いが、最大の功績は、明確な根拠資料に基づいた先行研究の批判検証、そして、古写本の文字・訓読を評価しようとする論証方法を確立させたことだと述べられました。 報告の後、渡邉卓先生(國學院大學准教授)の司会で討議がなされた。木村正辞が収集した或いは見た蔵書などのモノ資料と彼の研究との関わりについてや、近代おける『万葉集』研究の変化などが話題に挙がりました。 研究会には約40名が参加され、盛況の内に幕を閉じました。 大谷 歩(天理大学人文学部講師)