國學院大学 「古典文化学」事業
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天之水分神
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天之水分神
読み
あめのみくまりのかみ
ローマ字表記
Amenomikumarinokami
別名
-
登場箇所
上・国生み神生み
他の文献の登場箇所
旧 天之水分神(陰陽本紀)
神名式 天水分豊浦命神社(摂津国住吉郡)
梗概
伊耶那岐・伊耶那美二神の神生みにおいて、水戸の神、速秋津日子神・速秋津比売神が河・海に因って持ち別けて誕生した八神(沫那芸神・沫那美神・頬那芸神・頬那美神・天之水分神・国之水分神・天之久比奢母智神・国之久比奢母智神)の第五。
諸説
「水分」は、水(ミ)を配る(クマリ)ことで、分水嶺に祭られる配水の神を指すとされる。「水分」と称する諸社が、「御県」「山口」の諸社と共に大和を中心に祭祀されており、臨時祭式「祈雨の神の祭八十五座」中に、大和国の「葛木水分社」「都祁水分社」「宇陀水分社」「吉野水分社」が見える。特には農業用の水に関係し、古くから雨乞いの祈願がなされており(『続日本紀』文武天皇二年四月二十九日条)、また、祈年祭祝詞には、御県・山口に並んで「水分に坐す皇神等の前に白さく、吉野・宇陀・都祁・葛木と御名は白して」と、稲作の豊かな稔りが祈られている。御県・山口・水分の諸社の由来について、大和に集中して鎮座することから、大和の風土の宗教性に基づく在地の信仰から来たものとする説があるが、一方、大和朝廷が大和の祭祀を管掌下に置くにあたって、各地の同様の性格の神に対して、同じ名称を与えてその祭祀を体系づけたものとする説もある。『古事記』の水分神の神格もこれになぞらえて推測されているが、具体的な役割は語られていない。
この場面には「天之」「国之」で対偶をなす神名が連なっていて、天之水分神は国之水分神と対をなしている。「天之」「国之」は、対偶を構成するための称に過ぎないとする説もあるが、水が天から降ってくる作用と国土から湧出する作用とを表しているとする説や、「天」を水源に近い河に、「国」を陸に近い海に配した命名とする説、また、「天」「国」の対応が、天神の命によって行われる、国生みから神生みへと続く展開の上に、天上と国土との連続性を保証しているとする説もある。
同時に生まれた八神の連関は、河と海の二神の相打って生じる泡に沫那芸神・沫那美神が生じ、その水面に頬那芸神・頬那美神が生じ、水が蒸発して天に昇り雨となって国土に下り湧き出す作用を天之水分神・国之水分神が司り、天之久比奢母智神・国之久比奢母智神がそれを補助して水を分かち与える、という水の恵みを讃えたものとする説がある。
参考文献
山田孝雄『古事記上巻講義 一』(志波彦神社・塩釜神社古事記研究会編、1940年2月)
倉野憲司『古事記全註釈 第二巻 上巻篇(上)』(三省堂、1974年8月)
西郷信綱『古事記注釈 第一巻(ちくま学芸文庫)』(筑摩書房、2005年4月、初出1975年1月)
『古事記(新潮日本古典集成)』(西宮一民校注、新潮社、1979年6月)
虎尾俊哉『延喜式 上(訳注日本史料)』(集英社、2000年5月)
砂入恒夫「古事記に於ける「天之」に就いて」(『古事記年報』13、1969年12月)
野口武司「『古事記』神生みの段の左註「神參拾伍神」」(『古事記及び日本書紀の表記の研究』桜楓社、1978年3月、初出1974年6・8・10月)
青木周平「「神生み」段の表現」(『青木周平著作集 上巻 古事記の文学研究』おうふう、2015年3月、初出1991年5月)
西宮一民「「神参拾伍神」考」(『古事記の研究』おうふう、1993年10月、初出1992年4月)
毛利正守「古事記上巻、岐美二神共に生める「嶋・神参拾伍神」考」(『萬葉』144号、1992年9月)
戸谷高明「「持別而生神」」(『古事記の表現論的研究』新典社、2000年3月、初出1992年12月)
大石泰夫「水分神社の祭祀と信仰―万葉集の成立基盤としてのヤマトの信仰的世界観―」(『万葉古代学研究所年報』7号、2009年3月)
天之甕主神
天之御中主神
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