國學院大学 「古典文化学」事業
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伊服岐能山之神
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伊服岐能山之神
読み
いふきのやまのかみ
ローマ字表記
Ifukinoyamanokami
別名
-
登場箇所
景行記・美夜受比売
景行記・伊服岐の山の神
他の文献の登場箇所
紀 荒神(景行天皇四十年是歳)/山神(景行天皇四十年是歳)
神名式 伊夫伎神社(近江国坂田郡)/伊富岐神社(美濃国不破郡)
梗概
倭建命が征伐に向かった伊服岐能山(伊吹山)の神。倭建命はこの神を素手で討ち取ることを宣言して山に登った際、山のほとりで大きな白い猪に出会うが、これを神ではなく、神の使いであると誤認した。そして、今ではなく帰りに殺そう、と誤った言挙をしたため、伊服岐能山の神(白い猪)は大氷雨を降らして倭建命を前後不覚にさせた。
諸説
近江国と美濃国との堺にある伊吹山は、古くから山岳信仰の対象として知られる。『延喜式』神名帳では、近江国坂田郡に「伊夫伎神社」、美濃国不破郡に「伊富岐神社」が記載されている。また、伊吹山については息長氏との関係を指摘する論も複数存在する。
『古事記』において、伊服岐山の神は、倭建命の言向の対象となるべき荒振神とされる。しかし、この神は白い猪の姿をしており、白い動物が神に近い性質を有することや、「白き猪、山の辺に逢ひき」という白猪を主語とした記述が、神に代表されるような人間の意志を超えた存在との出会いを示す用例であるという分析から、神聖な神であるとする説もある。
このように動物の姿として出現する神は、天皇家の祭祀を受ける天神系の人格神に対して、地祇的かつ在地の土俗的な神として性格づけられているという説や、伊服岐山の白猪をはじめ神武東征の際の熊野山の大熊、倭建命東征の際の足柄坂の白鹿は、熊野のクマ、足柄のシカ、伊服岐のイ(ヰ)という音通の語呂合わせによって地名や動物が選ばれたという説も存在する。
また、大猪が登場する説話は、『古事記』の他の段にも記述がある。雄略天皇の葛城山の説話で大猪が登場するが、後に一言主が現れることから、大猪は神あるいはその使いと解釈される向きがあり、伊吹山の神との関連が論じられている。
上記の他、伊服岐山の神の解釈としては、神武東征の際、熊野村で山神の悪気に触れて正気を失った説話と照らし合わせて、王化に服従しない賊徒を表したものだとする説や、強い風が吹きつける山に息を吹いている巨人神の姿を見立てたとする説、気候が激変しやすい山であり、山の険難や降雪によってしばしば交通が妨げられたことから悪神の存在を想定したとする説、霊山や高山には国魂の神が鎮座しているという上代の信仰から、国魂の神を帰服させようとしたとする説などがある。
『日本書紀』には「五十葺山」「胆吹山」と表記され、その神は白猪ではなく大蛇として出現する。『日本書紀』では蛇とされる理由について、蛇は水の神、猪は田の神と結びつけられるため、どちらも農耕神の性格を持つからである、との主張もある。
倭建命が前後不覚に陥った原因について、『古事記』では伊吹山の神への誤った言挙をしたためであると注する。なぜ「誤った」言挙をしたのかを論ずるにあたり、それが天皇の命じた「言向」の対象であるのかどうか、また言挙の内容や心ばえを問題とする説など多くの論があり、議論は揺れている。
参考文献
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西郷信綱『古事記注釈 第六巻』(筑摩書房、2006年、初出1988年8月・1989年9月)
次田潤『古事記新講』(明治書院、1956年7月)
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真弓常忠「犬と狩」(『古代の鉄と神々』学生社、1960年8月)
尾崎暢殃『古事記全講』(加藤中道館、1966年4月)
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吉井巌「孤独な皇子ヤマトタケル」(『天皇の系譜と神話二』塙書房、1976年6月、初出1972年11月~1973年7月)
吉井巌「ヤマトタケルの死」(『ヤマトタケル』学生社、1977年9月)
守屋俊彦『古事記研究―古代伝承と歌謡―』(三弥井書店、1980年、初出1979年11月)
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守屋俊彦「伊吹山の神―倭建命の登攀―」(『ヤマトタケル伝承序説』和泉書院、1988年6月、初出1987年1月)
尾畑喜一郎編『古事記事典』(おうふう、1988年9月)
青木周平「倭建命東征伝承と「言擧」」(『青木周平著作集 上巻 古事記の文学研究』おうふう、2015年3月、初出1989年1月)
中村啓信「雄略天皇と葛城の神」(『神田秀夫先生喜寿記念 古事記・日本書紀論集』1989年12月)
青木周平編『日本神話事典』(大和書房、1997年6月)
山口佳紀・神野志隆光校注・訳『新編日本古典文学全集1 古事記』(小学館、1997年6月)
小野諒巳「倭建命と伊服岐山の神―荒ぶらぬ白き神」(『國學院大學大学院文学研究科論集』37号、2010年3月)
小野諒巳「白猪神への「言挙」―「言向」から逸脱する倭建命―」(『倭建命物語論 古事記の抒情表現』花鳥社、2019年2月、初出2010年3月)
寺川真知夫「伊服岐能山の神と倭建命―言向・言挙を視野に入れて―」(『万葉古代学研究所年報』10、2012年3月)
飯依比古
伊予之二名島
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