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甕速日神

読み
みかはやひのかみ
ローマ字表記
Mikahayahinokami
別名
-
登場箇所
上・伊耶那美命の死
他の文献の登場箇所
紀 甕速日神(五段一書六、九段本書)/甕速日命(五段一書六)
旧 甕速日神(陰陽本紀)
拾 甕速日神(吾勝尊)
梗概
 伊耶那美神が迦具土神を生んだことによって神避りし、伊耶那岐神が迦具土神の頸を斬った際、刀の本についた血が湯津石村に走り着いて成った三神(甕速日神・樋速日神・建御雷之男神)の第一。
諸説
 樋速日神と対で化成。「甕」はミカと読み、同時に化成した建御雷之男神のミカと同じとされ、書紀の一書第六では武甕槌神と書き、甕速日神をその祖とする。
 火神被殺による神々の化成が表わす意義は、火の鎮圧、刀剣の製作、噴火現象、などの解釈があり、この神についてもそれとの関連から理解される。
 ミカを厳、速を迅速、日を太陽として、厳めしく迅速猛烈な太陽とする説、ミカを厳、ハヤを勢いのさかんなこと、ヒを霊として雷神の性格を取る説、ミカを御厳(ミイカ)の約、速日を霊能が猛烈なことを表わす接尾語として、神秘的で厳めしいことが猛烈である霊力(その表象として雷が認められる)とする説がある。落雷による出火の霊威の神格化とする説もある。
 日を太陽ととるか霊と取るか、また名義や刀剣、同列の神などとの関連から雷神の性格を認めるかどうかが分かれる。
 この神々が刀の本についた血が岩について化成したことについての解釈は、火神が斬られた際に化成した神々は、火にまつわる事象の誕生を物語っているとみて、刀を振り下ろすイメージが、稲妻が木に落ちてその木を折る様子やそれによる発火の様子を窺わせることから生まれた神話で、刀についた火神の血が火を表わし、それが地上の樹木等につくことで発火する落雷を表象しているとする説がある。
 書紀では、第九段本文の経津主神・武甕槌神の派遣の段にも、稜威雄走神の子、熯速日神の親として登場する。
参考文献
倉野憲司『古事記全註釈 第二巻 上巻篇(上)』(三省堂、1974年8月)
西郷信綱『古事記注釈 第一巻(ちくま学芸文庫)』(筑摩書房、2005年4月、初出1975年1月)
『古事記(新潮日本古典集成)』(西宮一民校注、新潮社、1979年6月)
勝俣隆「火の神迦具土神から生まれた水の神闇淤加美神・闇御津羽神」(『上代日本の神話・伝説・万葉歌の解釈』おうふう、2017年3月、初出2009年12月)

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