國學院大学 「古典文化学」事業
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野椎神
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神名データベース凡例
野椎神
読み
のづちのかみ
ローマ字表記
Nozuchinokami
別名
鹿屋野比売神
野椎
登場箇所
上・国生み神生み
他の文献の登場箇所
紀 野槌(五段本書、七段一書一)
旧 野椎神(陰陽本紀)/野槌(陰陽本紀、神祇本紀)
神名式 野蛟神社(加賀国加賀郡)
梗概
野の神、鹿屋野比売神のまたの名。
諸説
神格については、「鹿屋野比売神」の項も参照されたい。
読みは、ノツチ、もしくは、ノヅチで、両説ある。名義は、野つ霊(ち)、すなわち、野の精霊と解される。
ノは野の意であるが、古代語の野の指す地形については明確でなく、平地ではなく山の裾の広い傾斜地を指すという説や、里の外縁に広がり山にまでは至らない地域のことを指すとする説がある。一方、文献上では、山や丘陵地を含む様々な地形に対してノという語が使われていることから、これを、特定の地形を指す語ではなく土地の属性を言い表す語と捉え、ハラ(原)が人間の生活から離れた近づきがたい地を指すのに対して、ノは人間の生活の範囲内にある生産や遊びの場を指すとする説もある。践祚大嘗祭式・在京斎場条には、斎場や大嘗宮の造営において、山に入って材木を切り出す際に山の神を祭り、野に入って萱を刈る際に野の神を祭ることが見えているが、野椎神のノは、そうした有用植物の生えた土地を指しているとする説もある。
チは、カミという比較的新しい、人態的な神霊観と捉えられる霊格に対して、より太古の非人態的な精霊観に基づいた霊格を指すとされている。鹿屋野比売という神名とその別名の野椎とを比べると、野椎が精霊的であるのに対して、鹿屋野比売の方が擬人的・人格的な名称で、より新しい神霊観が反映されていると考えられる。『日本書紀』では「野槌」とあって「神」が付かないが、古くは単にノヅチと称し、「神」の称は後に付けられたと考えられる。他にチの付く神名としては、ヲロチ(大蛇)、ミヅチ(蛟)、また、蛇の姿を持つとされていたイカヅチなどがある。このように、チは蛇や爬虫類のような姿とされていたようである。野椎が奈良時代以前にどう捉えられていたか定かではないが、平安時代の字書では、『新撰字鏡』の「蠍」の字(さそりの意)や、『類聚名義抄』の「蝮」の字(まむしの意)がノツチと読まれており、同じく平安時代の漢文訓読資料でも「蝮蠍」や「田蛟」をノツチと訓読した例があり、この当時には、野椎がさそりやまむしのようなものとして考えられていたことがうかがわれる。
さらに後世には、妖怪のようにも認識されるようになった。中世の説話集『沙石集』には、持戒を疎かにした比叡山の学僧が野槌に生まれ変わった話が載っており、その中で、「野槌と云ふは、常にも無き獣なり。深山の中に希に有りと云ふ。形は大にして、目鼻手足もなくて、ただ口ばかりある物の、人を取りて食ふといへり。」と説明している(巻第五本・三「学生の畜類に生れたる事」)。近世では『和漢三才図会』に「野槌蛇」とあり、山奥で目撃される、大きな口で人の脚を噛む蛇のような生き物で、柄の無い槌に似ていることから「野槌」と呼ばれていると説明している。これを、現代でも各地で言い伝えられるツチノコと結びつける説もあるが、もはや本来の山の神(精霊)としての野椎との関係は希薄であるといえる。
この神名を持つ神社として、『延喜式』神名帳に加賀国加賀郡「野蛟神社」が見える。石川県金沢市の野蛟神社に比定され、現在の社名はヌヅチと読まれる。創建は天平四年(732)と伝えられ、当時、疫病が流行した際、老人として顕現したヌヅチの神の教えに従い、その神を祭ったことで疫病がおさまったことに始まると伝えられている。社名の由来については、また、近くにある河北潟の沼地が、古代は鎮座地まで及んでいたために、沼地であることによってヌツチと呼ばれたのではないかという説もある。
参考文献
倉野憲司『古事記全註釈 第二巻 上巻篇(上)』(三省堂、1974年8月)
西郷信綱『古事記注釈 第一巻(ちくま学芸文庫)』(筑摩書房、2005年4月、初出1975年1月)
『古事記(新潮日本古典集成)』(西宮一民校注、新潮社、1979年6月)
松村武雄『日本神話の研究 第二巻』(培風館、1955年1月)第四章
松村武雄「霊格としてのチの考究」(『神道宗教』13号、1956年12月)
土橋寛「霊魂―その形と言葉―」(『日本古代の呪禱と説話』塙書房、1989年10月、初出1962年12月)
溝口睦子「記紀神話解釈のひとつのこころみ(上)―「神」概念を疑う立場から―」(『文学』1973年10月号、1973年10月)
『式内社調査報告書 第十六巻 北陸道2』(式内社研究会編、皇学館大学出版部、1985年2月)
辻田昌三「「野」と「原」」(『古代語の意味領域』和泉書院、1989年7月、初出1980年8月)
青木周平「「神生み」段の表現」(『青木周平著作集 上巻 古事記の文学研究』おうふう、2015年3月、初出1991年5月)
『古典基礎語辞典』(大野晋編、角川学芸出版、2011年10月)
根析神
波邇夜須毘古神
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