國學院大学 「古典文化学」事業
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淤迦美神
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淤迦美神
読み
おかみのかみ
ローマ字表記
Okaminokami
別名
淤加美神
登場箇所
上・須賀の宮
上・大国主神の系譜
他の文献の登場箇所
豊後風 蛇龗(直入郡)
万 於可美(2・104)
神名式 意賀美神社(河内国茨田郡、和泉国和泉郡)/意加美神社(備後国甲奴郡、越前国坂井郡)
梗概
須佐之男命の系譜と大国主神の系譜に見える。日河比売・比那良志毘売の親神。
諸説
『古事記』の出雲神話中に記された須佐之男命の系譜と大国主神の系譜は、もとは一つに連続した記事だったといわれる。大年神の系譜を含めた三系譜全体の構造が問題となるが、本文の不審や、系譜と物語との内容の食い違いなど、疑問点が多い。系譜中の神々の多くは他文献に見えず、『古事記』でも事跡が語られないため、それぞれの意義や関係性が明らかにしがたい。全体の解釈としては、大国主神の性格付けが天皇系譜との対比によって系譜に示されているとする説や、国土神から水の神へとその誕生を物語る出雲土着の神話が骨子になっているとする説、神の祝福を受けて豊かな自然環境が出現することを望む人々の願いが反映されているとする説がある。
淤迦美神の名義について、一般にオカミは水を掌る竜神と考えられている。オカミの名を持つ神は各書に散見され、『古事記』には闇淤加美(くらおかみ)神が見えており、『日本書紀』には、五段一書六に「闇龗(くらおかみ)」、同一書七に「高龗(たかおかみ)」が見え、「龗」に「於箇美(おかみ)」の訓注がある。「龗」の字は「靇」とも書き、竜の意である。『豊後国風土記』直入郡球覃郷条では「蛇龗」と書いてオカミと読んでおり、景行天皇がその村に行幸した際に、飲料水を汲ませたところ、その泉に蛇龗がいたため、仰せ言に、その水はきっと臭いから汲んで使ってはならない、と発せられたことによって、その泉を「臭泉(くさいづみ)」というようになり、やがて「球覃(くたみ)」の郷名になったと伝える。また、『万葉集』(2・104)には「我が岡の龗に言ひて降らしめし雪の摧けしそこに散りけむ」とある。これらの例から、一般にオカミとは、峡谷や泉、岡に棲み、竜蛇の姿で、水・雪・雨などを掌る神であると考えられており、各書の記述から、下級の神とされていたとも指摘されている。
『古事記』におけるその子孫は、須佐之男命の系譜では、日河比売―深淵之水夜礼花神―淤美豆奴神と、水にまつわる神名が連なっている。大国主神の系譜でも、名義未詳の神名も混じるが、水にまつわると考えられる神々が見えている。
『延喜式』神名帳には、河内国茨田郡「意賀美神社」、和泉国和泉郡「意賀美神社」、備後国甲奴郡「意加美神社」、越前国坂井郡「意加美神社」が見える。尾張国海部郡「憶感神社」の祭神もオカミの神か。他に河内国石川郡「大祁於賀美神社」、備後国恵蘇郡「多加意加美神社」、壱伎島石田郡「国津意加美神社」などオカミとつく社名が全国的にある。
参考文献
西郷信綱『古事記注釈 第二巻(ちくま学芸文庫)』(筑摩書房、2005年6月、初出1975年1月)
倉野憲司『古事記全註釈 第三巻 上巻篇(中)』(三省堂、1976年6月)
『古事記(新潮日本古典集成)』(西宮一民校注、新潮社、1979年6月)
中西進『中西進著作集 1 古事記をよむ 一』(四季社、2007年1月、初出1985年11月)
菅野雅雄「神々の系譜」(『菅野雅雄著作集 第四巻 古事記論叢4 構想』おうふう、2004年7月、初出1982年9月)
菅野雅雄「須佐之男命の系譜」(『菅野雅雄著作集 第四巻 古事記論叢4 構想』おうふう、2004年7月、初出1984年3月)
三浦佑之「大国主神話の構造と語り―『古事記』の口承性―」(『古事記研究大系8 古事記の文芸性』高科書店、1993年9月)
阿部眞司「古代文献にみる水神・蛇神・山神―古代蛇神解釈のために―」(『大物主神伝承論』翰林書房、1999年12月、初出1994年3月)
姜鐘植「スサノヲ系譜「十七世神」について―系譜と説話の関わりという観点から―」(『井手至先生古稀記念論文集 国語国文学藻』和泉書院、1999年12月)
福島秋穗「八嶋士奴美神より遠津山岬多良斯神に至る神々の系譜について」(『紀記の神話伝説研究』同成社、2002年10月、初出2002年1月)
谷口雅博「『古事記』上巻・出雲系系譜記載の意義」(『日本神話をひらく「古事記」編纂一三〇〇年に寄せて―第九回:フェリス女学院大学日本文学国際会議―』、2013年3月)
山田純「『豊後風土記』直入郡球覃郷「臭泉」の水神―漢籍の知と神話的思考の融合―」(『日本書紀典拠論』新典社、2018年5月、初出2014年1月)
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