國學院大学 「古典文化学」事業
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於母陀流神
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於母陀流神
読み
おもだるのかみ
ローマ字表記
Omodarunokami
別名
-
登場箇所
上・初発の神々
他の文献の登場箇所
紀 面足尊(二段本書、三段一書一)
旧 面足尊(神代系紀)
梗概
神世七代の第六代で、阿夜訶志古泥神と対偶を為す男神。
諸説
『古事記』における神世七代の意義については、伊耶那岐神・伊耶那美神の誕生を到達点として、そこに到る過程を神々の生成によって発展的に表現したものと捉える解釈が多い。その過程の意味する所は、(1)国土の形成を表すとする説、(2)地上の始まりを担う男女の神の身体(神体)の完成を表すとする説、(3)地上に於ける人類の生活の始原を表すとする説などがある。
於母陀流神は、次に成った女神、阿夜訶志古泥神と対偶をなす男神であるが、他の神世七代の対偶神と違い、神名に共通性がない所に疑問が持たれる。於母陀流神の名義は、『日本書紀』の「面足尊」という表記から、神や人の容貌にまつわるものとして解されており、その神格は、神世七代における岐美二神生成の直前に位置する対偶神として、身体の完成することを面貌に託して表した神とする方向の解釈が一般的である。
「於母陀流」を顔(面)が成り整う(足る)意と解して、身体の完成を表していると考え、人体が完備することの神格化とする説や、『万葉集』(2・220)に讃岐国を「天地 日月と共に 足り行かむ 神の御面と 継ぎ来る 中の湊ゆ 船浮けて」と表現した歌があるように、国土の表面が満ち足りていくことを意味しつつ、顔立ちや体つきが整って身体が備わることを表し、男女交合の兆しを表現しているとする説、また、男女の掛け合いの言葉が、二神の対偶によって表されたものとして、面足神を、男神が女神に対して「あなたの容貌は整って美しい」と褒めたこととし、阿夜訶志古泥神を、それに対する「まあ何と恐れ多いこと」という返事と解釈する説や、完成した肉体に讃美の言葉をかけることで命と魂を宿らせる古代の観念の反映とする説がある。他に、偉大な面貌を持った、境界防塞の神像もしくは生産豊穣の性格を帯びた守護神の神像の形象化とする説や、性器崇拝にまつわる、性器の様相に対する讃美による名称とする説などがある。
参考文献
山田孝雄『古事記上巻講義 一』(志波彦神社・塩釜神社古事記研究会編、1940年2月)
倉野憲司『古事記全註釈 第二巻 上巻篇(上)』(三省堂、1974年8月)
西郷信綱『古事記注釈 第一巻(ちくま学芸文庫)』(筑摩書房、2005年4月、初出1975年1月)
『古事記(新潮日本古典集成)』(西宮一民校注、新潮社、1979年6月)
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神野志隆光・山口佳紀『古事記注解2』(笠間書院、1993年6月)
大野晋「記紀の創世神話の構成」(『仮名遣と上代語』岩波書店、1982年2月、初出1965年8月)
益田勝実「幻視―原始的想像力のゆくえ―」『火山列島の思想』(筑摩書房、1968年7月)
井手至「古事記創生神話の対偶神」(『遊文録 説話民俗篇』和泉書院、2004年5月、初出1978年3月)
金井清一「神世七代の系譜について」(『古典と現代』49号、1981年9月)
神野志隆光「「神代」の始発」(『古事記の達成』東京大学出版会、1983年9月、初出1982年)
神野志隆光「ムスヒのコスモロジー―『古事記』の世界像―」(『古事記の世界観』吉川弘文館、1986年6月)
金井清一「神世七代(『古事記』の〈神代〉を読む)」(『國文學 解釈と教材の研究 』33号、1988年7月)
西宮一民「構造論的解釈と文脈論的解釈―冒頭の創世神話を中心として―」(『古事記の研究』おうふう、1993年10月、初出1989年12月)
神田典城「対偶神系譜形成についての一考察」(『古事記・日本書紀論叢』群書、1999年7月)
宮本明子「伊邪那岐・伊邪那美の婚姻―神世七代についての考察」(『日本文学論叢(法政大学大学院)』30巻、2001年3月)
『古典基礎語辞典』(大野晋編、角川学芸出版、2011年10月)
勝俣隆「宇比地邇神から伊邪那美神までの十神誕生の神話的解釈」(『上代日本の神話・伝説・万葉歌の解釈』おうふう、2017年3月、初出2013年3月)
勝俣隆「於母陀流神と阿夜訶志古泥神の神話的存在意味について」(『上代日本の神話・伝説・万葉歌の解釈』おうふう、2017年3月、初出2013年3月)
淤美豆奴神
思金神
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