國學院大学 「古典文化学」事業
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思金神
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神名データベース凡例
思金神
読み
おもひかねのかみ/おもいかねのかみ
ローマ字表記
Omoikanenokami
別名
常世思金神
登場箇所
上・天の石屋
上・葦原中国の平定
上・天若日子の派遣
上・建御雷神の派遣
上・天孫降臨
他の文献の登場箇所
紀 思兼神(七段本書・一書一、九段一書一)
拾 思兼神(日神の石窟幽居、日神の出現)
旧 思兼神(神祇本紀、天神本紀) /八意思兼神(天神本紀)/思金神(天神本紀)/常世思金神(天神本紀)/八意思金命(国造本紀)
梗概
高御産巣日神の子。天の石屋の段で、八百神が天安河原に集まって天照大御神を石屋からおびき出す計画をした際に、思慮の役割を担った。
葦原中国の平定の段では、高御産巣日神・天照大御神の諮問に応じて、葦原中国に派遣すべき神を諸神とともに協議し、意見を進言した。
天孫降臨の段では、邇々芸命の天降りに際して、八尺の勾璁・鏡・草那芸剣や手力男神・天石門別神とともに付き従い、また、天照大御神の命によって政事を請け負って、伊須受能宮(後の伊勢の内宮)を拝祭した。
諸説
名義は、『日本書紀』の表記「思兼神」に基づき、多くの思慮を兼ね備えた神の意と解されている。また、カネを予めの意ととり、予見の神と解する説もある。『日本書紀』では「深く謀り遠く慮ひ」「思慮の智有り」と称されており、さらに『先代旧事本紀』では、「八意」(多くの思慮)という称辞を冠して「八意思兼神」とも呼ばれていることなどからも、優れた智力の神と考えられる。単に智力の優れていることを意味するのでなく、祭りを実行するための政務を取り計らう神で、政治を行うことの神格化とする説もある。「金」の字には「加尼(かね)」と読む音注がわざわざつけられているが、その注記の意図は、オモヒガネというような熟語に読まず、「思」と「金」とで意味が切れることを表しているとする説があり、神名を、思いが金のようにしっかりした神、と解釈する見方も提示されている。
天孫降臨の段では「常世の思金神」とも称されているが、「常世」については、末永く慮る意の称辞とする説や、永遠の後のことを予知する意とする説、高天原を指すと捉える説などがある。
この神は、記紀ともに、常に天照大御神に関わって登場していることが指摘されており、天照大御神の重要な相談役の立場にある神と考えられている。天の石屋の段で、八百万神が集結して天照大御神を石屋からおびき出す際の役割は、「思金神に思はしめて」と記されており、これは、おびき出すための祭祀の方法を計画したことを意味すると解されている。また、『日本書紀』や『古語拾遺』の記述に基づき、祭祀の主宰者となって計画とともにその実行を指揮したとも考えられている。一方、『古事記』での祭祀の主宰者を八百万神全体と捉え、思金神は神々の叡智を結集することを役割とする神で、その神々の知恵の総体の神格化と捉える説もある。葦原中国の平定の段以降は、天照大御神および高御産巣日神(高木神)からの諮問に応じて諸神らとの合議を主宰したり、献策をする働きをしている。
天孫降臨の段での登場場面は、文章が曖昧なため、邇々芸命の降臨の際に思金神が天照大御神から受けた命令および実行の内容について、解釈が諸説ある。通例、思金神は「伊須受能宮」の祭祀を受け持った、もしくは、「伊須受能宮」の政務を掌る宮司の役目を任じられた、といった内容に解されているが、他に、思金神ではなく邇々芸命が命を受けて、天照大御神の御魂の鏡と思金神とを「伊須受能宮」に祭り、政事を執り行った、という内容に解する説もある。
思金神の神格について、高天原における天照大御神と思金神との関係が、葦原中国における大国主神と事代主神との関係に類似していることが指摘されている。すなわち、思金神・事代主神が主権神に代わって発する言葉が決定力を持つ点や、思金神に手力男神が、事代主神に建御名方神が対偶をなしており、どちらも手の力の神格化という性格や腕力で大事を解決する働きをすることが共通する点、「八意思兼神」「八重事代主神」の「八意」「八重」という称辞が類似し、どちらも神々の意思を代表する働きを表していると考えられる点、といったことが挙げられている。そして、どちらの神も、天上・地上それぞれの世界の神々を代表して、主権神の代わりに解決策を案出する神と捉えられ、各世界における王権の呪的宗教的支配力を代表する神に位置づけられると説かれている。
また、『古事記』や『日本書紀』第七段一書一では、思金神を高御産巣日神の子としているが、元来は天照大御神と結びついた神と見られることから、天孫降臨神話が、高御産日神単独を主体とする神話(日神系)から、天照大御神単独を主体とする神話(天照系)へと変化していく過程で、親子関係に結びつけられるようになったと捉える説がある。
記紀以外の文献では、『先代旧事本紀』天神本紀に「八意思兼神」が見え、その子「表春命」を「信乃阿智祝部」らの祖とし、「下春命」を「武蔵秩父国造」らの祖とする。また、同書・国造本紀では、知々夫国造の「知知夫彦命」を「八意思金命」の十世の孫とする。
参考文献
西郷信綱『古事記注釈 第二巻(ちくま学芸文庫)』(筑摩書房、2005年6月、初出1975年1月)
西郷信綱『古事記注釈 第三巻(ちくま学芸文庫)』(筑摩書房、2005年8月、初出1976年4月)
西郷信綱『古事記注釈 第四巻(ちくま学芸文庫)』(筑摩書房、2005年10月、初出1976年4月)
倉野憲司『古事記全註釈 第三巻 上巻篇(中)』(三省堂、1976年6月)
倉野憲司『古事記全註釈 第四巻 上巻篇(下)』(三省堂、1977年2月)
『古事記(新潮日本古典集成)』(西宮一民校注、新潮社、1979年6月)
小松英雄『国語史学基礎論(2006簡装版)』(笠間書院、2006年11月、1973年1月初版)第3章
古橋信孝「思兼神について―虚構意識の発生の問題―」(『日本神話Ⅱ(日本文学研究資料叢書)』有精堂、1977年9月、初出1975年10月)
藤井貞和「異郷の構造」(『古日本文学発生論 増補新装版』思潮社、1992年4月、初出1976年10月)
古橋信孝「思兼神論再論」(『五味智英先生古稀記念 上代文学論叢(論集上代文学 第八冊)』笠間書院、1977年11月)
神田典城「天界の主神定立の様相」(『記紀風土記論考』新典社、2015年6月、初出1982年3月)
越野真理子「オモヒカネの研究」(『学習院大学国語国文学会誌』30号、1987年3月)
西條勉「アマテラス大神と皇祖神の誕生」(『古事記と王家の系譜学』笠間書院、2005年11月、初出1994年3月)
越野真理子「オモヒカネの役割」(『古事記の神々 上 古事記研究大系5-Ⅰ』高科書店、1998年6月)
松本直樹「天孫降臨条「詔」前後の解釈―思金神を祭る意味―」(『古事記神話論』新典社、2003年10月、初出2001年2月)
『古典基礎語辞典』(大野晋編、角川学芸出版、2011年10月)
北野達「アメノイハヤ神話のヨミ―八百万神とオモヒカネの神―」(『米沢国語国文』46号、2017年12月)
青柳まや「オモヒカネの系譜に関する考察」(『古代中世文学論考』第44集、2021年10月)
於母陀流神
香山戸臣神
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