國學院大学 「古典文化学」事業
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大綿津見神
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大綿津見神
読み
おほわたつみのかみ/おおわたつみのかみ
ローマ字表記
Ōwatatsuminokami
別名
-
登場箇所
上・国生み神生み
他の文献の登場箇所
旧 大綿津見神(陰陽本紀)/少童命(陰陽本紀)
梗概
伊耶那岐神と伊耶那美神との神生みによって生まれた海の神。
諸説
「綿津見」一般の事柄に関しては、「綿津見神」の項も参照されたい。
ワタツミの名義について、「綿津見」の字は借字で、ワタは海のこと、ツは連体助詞、ミは一種の霊格を表し、神名は、海の神霊の意と解される。海の神であるが、自然としての海そのものの神格ではなく、海を掌る支配者としての存在であると考えられている。
ワタツミのワタという語は、『万葉集』に、ワタナカ(「海中」「渡中」)、ワタノソコ(「海之底」「綿之底」「海底」。オキの枕詞)といった例が見えるが、ワタという一語単独で海そのものを指した例は上代の文献中にも見られない。ウミとの違いは明確でないが、ウミを、湖や池を含めた、大いなる水の意味の語とし、ワタを海洋に相当する語と捉える見解もある。ワタの語源については、「渡」と同源とも、古代朝鮮語で海の意のpataと同源とも、或いは、ワタツミが幼い姿の神と考えられることから、ヲトコ・ヲトメのヲトの音韻交替ととる説もある。ミは、神名や古代の人名に見られる称で、カミという称よりも古い概念と考えられるが、その意味については、神秘な力を持った存在のこととする説や、「見」の字を借字でなく意味を持たせた表記と捉えて、見守る主宰者の意とする説などがある。
神名にワタツミと付く神は多いが、ヤマツミと付く山の神が多いのと同じく、元来は特定の神格に限らず、海の神一般を指す普遍的な名称であったとも考えられる。類似の神として、伊耶那岐神の禊の段に、禊で生まれた底津綿津見神・中津綿津見神・上津綿津見神の三柱の綿津見神が見え、海幸山幸の段には、火遠理命が訪問した海神の国にいる綿津見神(綿津見大神)が見える。ただし、それら全てを同様な性質の神格として包括的に捉えられるかは定かでない。岐美二神の神生みによって生まれた大綿津見神は、水戸、風、木、山、野の神々と並ぶ「海の神」として生まれた神であり、さらに「大」という美称のつく所から、海一般に対する信仰を示しているようである。類似の構成を持つ神名として、『古事記』には、大山津見神が見える。
参考文献
倉野憲司『古事記全註釈 第二巻 上巻篇(上)』(三省堂、1974年8月)
西郷信綱『古事記注釈 第一巻(ちくま学芸文庫)』(筑摩書房、2005年4月、初出1975年1月)
西郷信綱『古事記注釈 第四巻(ちくま学芸文庫)』(筑摩書房、2005年10月、初出1976年4月)
『古事記(新潮日本古典集成)』(西宮一民校注、新潮社、1979年6月)
柳田国男「桃太郎の誕生」(『定本柳田国男全集』8、筑摩書房、1962年2月)
肥後和男「海神について」(『神話と民俗』岩崎美術社、1968年10月)
益田勝実「久遠の童形神―イメージの化石を掘る―」(『秘儀の島―日本の神話的想像力』筑摩書房、1976年8月、初出1972年12月)
溝口睦子「記紀神話解釈のひとつのこころみ(上)―「神」概念を疑う立場から―」(『文学』1973年10月号、1973年10月)
岡田米夫「海人族の氏神」(『海国日本の誕生』文永社、1976年12月)
加藤義成「「津見」の考」(『古事記年報』20号、1978年1月)
牧田茂「海の神」(『講座日本の古代信仰 第2巻 神々の誕生』学生社、1979年11月)
平野仁啓「日本の神の原型について―筒之男命と綿津見神―」(『東アジアの古代文化』39号、1984年1月)
菅野雅雄「海神考」(『菅野雅雄著作集 第二巻 古事記論叢2 説話』おうふう、2004年3月、初出1995年9月)
大倭豊秋津島
淤美豆奴神
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