國學院大学 「古典文化学」事業
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大倭豊秋津島
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大倭豊秋津島
読み
おほやまととよあきづしま/おおやまととよあきづしま
ローマ字表記
Ōyamatotoyoakizushima
別名
天御虚空豊秋津根別
登場箇所
上・国生み神生み
他の文献の登場箇所
紀 大日本豊秋津洲(四段本書・一書一・七・八)
旧 大日本豊秋津州(陰陽本紀)/大倭豊秋津島(陰陽本紀)/天御虚空豊秋津根別(陰陽本紀)
梗概
伊耶那岐神と伊耶那美神の国生みによって生まれた、大八島国の八島の内の最後の島。またの名を天御虚空豊秋津根別という。
諸説
大倭豊秋津島は、一般的には、本州を指すとされる。ただし、伊耶那岐神・伊耶那美神が生んだ島々は、この神話の語られた当時の王権の統治領域の意識が反映していると見られるため、八世紀以前、当時まだ東北など隅々にまでは勢力が及んでいなかった本州全体をそのまま当てはめてよいかは疑問も残る。『日本書紀』の一部の伝では、二神が生んだ島々の中に北陸地方にあたる「越洲」が含まれており、これも本州の一部であることから、本州全体ではなく畿内を指すとする説もある。
島名について、「大」と「豊」は美称とされるが、「豊」は特に「秋」にちなみ豊穣の意を含んでいると捉える説がある。「倭」は『日本書紀』では「日本」の字を当てており、「耶麻騰(やまと)」と読む訓注がつけられている。古くは『漢書』地理志に日本を指した呼称として「倭」の字が使われたのが見えるが、日本国内でも中国の例を受けて古くからこの字が使われていた。和語のヤマトは元々、後の大和国にあたる一国の名であったが、その国が日本の統治の本拠となったことから、やがて天皇が支配する領域としての日本全体を広く指すようになったとされる。
「秋津」の「津」の読みは、清音・濁音両方の可能性が考えられる。記紀万葉の音仮名表記には濁音の字「豆(づ)」が通例で、清音の字は「菟(つ)」が一例のみ見られる。「菟」を異例と捉えて奈良時代は濁音だったと見なすのが一般的であるが、「豆」の字は清音に使われる場合もあることから、「菟」を根拠に清音だったと解する説もある。「秋津」の意味については、雄略記に、吉野の阿岐豆野(あきづの)に行幸した雄略天皇が、腕に食いついた虻を食っていったとんぼを褒めて詠んだ歌に「斯くの如 名に負はむと そらみつ 倭の国を 蜻蛉島(あきづしま)とふ」(記・96)とあることや、後掲の神武紀の記事によれば、とんぼの意と解される。一方で、「豊葦原千秋長五百秋水穂国」(葦原中国平定段)、「豊秋日本」(欽明紀十三年十月条)といった呼称から、本来はとんぼではなく秋の意味で(ヅ/ツは連体助詞)、豊穣の意を込めた名であったとする見解もある。他に、「あきつ神」などの「現(あき)つ」の意と捉えて、「秋津島」を、黄泉国や常世国に相対する、明るい現実の国土の意と解する説もある。
『日本書紀』神武天皇三十一年四月乙酉朔条には、神武天皇が国中を巡幸し、腋上の嗛間丘に登って国の形を見回した時、国の形が、とんぼが尻をなめあい輪になって交尾する様に似ていると発言したことから(「猶し蜻蛉(あきづ)の臀呫(となめ)せるが如もあるかも」)、「秋津洲(あきづしま)」の名が起こったという地名起源を載せている。大和盆地の形状を指したものと考えられるが、第六代孝安天皇の皇居を「葛城の室の秋津島宮」(記)と称するのがその地だとも言われ、これは現在の奈良県御所市の室に当たるとされる。「秋津島」も元来は大和の中の一地域を指す呼称であったのが、ヤマトとともに拡大して本州ないしは日本を指すようになったとも考えられている。『万葉集』では、「蜻島」「秋津島」が「やまと」の枕詞として使われている(1・2、13・3250、13・3333、19・4254、20・4465)。
なお、「大倭豊秋津島」という島名を、実際的な呼称ではなく、その島・領域に対する呪的・詩的な讃え名と捉える見方もある。
参考文献
山田孝雄『古事記上巻講義 一』(志波彦神社・塩釜神社古事記研究会編、1940年2月)
倉野憲司『古事記全註釈 第二巻 上巻篇(上)』(三省堂、1974年8月)
西郷信綱『古事記注釈 第一巻(ちくま学芸文庫)』(筑摩書房、2005年4月、初出1975年1月)
大野晋『上代仮名遣の研究』(岩波書店、1953年6月)
丸山林平「「あきつしま」か「あきづしま」か」(『解釈』4巻2号、1958年2月)
櫻井満「秋津島考 一」(『櫻井満著作集 第5巻 万葉びとの憧憬』おうふう、2000年6月、初出1961年10月)
櫻井満「秋津島考 二」(『櫻井満著作集 第5巻 万葉びとの憧憬』おうふう、2000年6月、初出1961年10月)
大山津見神
大綿津見神
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