國學院大学 「古典文化学」事業
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高木神
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神名データベース凡例
高木神
読み
たかぎのかみ
ローマ字表記
Takaginokami
別名
高木大神
高御産巣日神
登場箇所
上・天若日子の派遣
上・建御雷神の派遣
上・天孫降臨
神武記・熊野の高倉下
他の文献の登場箇所
旧 高木命(神代本紀)
梗概
高御産巣日神の別名で、天若日子の派遣の段以降、この名で呼ばれるようになる。天照大御神とともに葦原中国の平定を主導した神。
神武記では、天照大御神とともに熊野の高倉下の夢に現れ、建御雷神の提案により横刀を高倉下に授ける。その後も、八咫烏を進軍の先導役として天から派遣しており、神武天皇の東征を助ける神として活躍する。
諸説
高木神の「高木」は、一般には「高い木」の意として捉えられ、神の来臨する巨木に対する信仰(巨木信仰)と高御産巣日神の神格との結びつきが説かれている。
元来、高御産巣日神は天の最高神と解されている。日・月を天と同一視する北方系の天の至高神の観念に基づき、高御産巣日神を太陽神であったと考え、太陽神の依代としての巨木(高木)が名の由来になったとする説がある。巨木と太陽の関わりは『古事記』仁徳天皇条の巨木伝承(「枯野船」)などから窺うことができる。更に『日本書紀』九段一書二には、「天津神籬(あまつひもろき)」と「天津磐境(あまついはさか)」を高皇産霊尊自らが造り、天孫降臨の随伴神に託したとする記事が見られる。これらは高皇産霊尊が己の孫を祭る場所として設けたものであるが、特に木の関わる祭場「神籬」を高皇産霊尊が依りつく神木として捉える説もある。
依代以外の観点から「高木」を捉えたものとしては、巨木と落雷に注目した説がある。『古事記』において「高木神」が単独で登場する箇所が、天若日子反逆の場面に見られる「返し矢」説話と、神武記における八咫烏の派遣のみであることに目を向け、“矢を降すこと”と“鳥”を雷の象徴と解し、高木神は本来雷を司る神であったと論じられている。
また、天若日子派遣の場面を葦原中国平定の一部と捉え、「高木」を「高城」、すなわち大和朝廷による異族支配の重要拠点の意と捉えて、この神を平定神と解する説もある。
呼称が天若日子派遣の場面を境に急に変化する点も問題とされている。まず、異なる伝本や異伝が接合された結果として、呼称が変化したと捉える説がある。ただし、異伝であれば『日本書紀』を含めた他文献にこの神名が一切登場しないのは不審であるとも指摘されている。一方、異なる伝本や異伝を接合する際、『日本書紀』は神名をすべて「タカミムスヒ」の名で統一させたのに対し、『古事記』は原資料の「高木神」という呼称を保存したと論じる説もある。
また、『古事記』では、元来太陽神として捉えられている高御産巣日神が、同じく太陽神の神格を持つ天照大御神と並列されている。『古事記』は類似する二神の内、高御産巣日神を「高木神」という別名を用いて格下げした形で記すことで、司令神としての主導権と天皇家の祖先神としての神格を、高御産巣日神から天照大御神へ移行させたと解されている。
更に、天若日子が葦原中国へ降る際、天つ神から賜った「天の麻迦古弓」「天の波波矢」の呼称が、「天の波士弓」「天の加久矢」へ言い換えられており、「ハジの木」から「高木」へと、「木」つながりの連想によって呼称が変化したとする説もある。
その他、「高御産巣日神」の項も参照。
参考文献
『古事記 上代歌謡(日本古典文学全集)』(荻原浅男・鴻巣隼雄 校注・訳、小学館、1973年11月)
西郷信綱『古事記注釈 第三巻(ちくま学芸文庫)』(筑摩書房、2005年8月、初出1976年4月)
倉野憲司『古事記全註釈 第四巻 上巻篇(下)』(三省堂、1977年2月)
『古事記(新潮日本古典集成)』(西宮一民校注、新潮社、1979年6月)
『古事記(新編日本古典文学全集)』(山口佳紀・神野志隆光 校注・訳、小学館、1997年6月)
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戸谷高明「ムスビ二神に関する考察」(『古代文学の研究』桜楓社、1965年3月、初出1959年12月)
竹野長次「天地開闢説」(『古事記の民俗学的研究』文雅堂書店、1960年4月)
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西川順土「高木神について」(『記紀・神道論攷』皇學館大学出版部、2009年3月、初出1977年3月)
青木周平「巨木伝承の展開と定着」(『青木周平著作集 中巻 古代の歌と散文の研究』おうふう、2015年11月、初出1978年11月)
三谷栄一「古事記の成立と神祇官」(『古事記成立の硏究』有精堂、1980年7月、初出1979年10月)
神田典城「高木神とタカミムスヒ」(『記紀風土記論考』新典社、2015年6月、初出1982年1月)
坂本勝「高木神論」(『古代文学』25号、1986年3月)
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溝口睦子「“高木神”について」(『十文字国文』12号、2006年3月)
烏谷知子「天照大御神と高御産巣日神―常世から高天原へ―」(『上代文学の伝承と表現』おうふう、2016年6月、初出2009年3月)
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