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高比売命

読み
たかひめのみこと
ローマ字表記
Takahimenomikoto
別名
下光比売命
下照比売
登場箇所
上・大国主神の系譜
上・天若日子の派遣
他の文献の登場箇所
紀 高姫(九段本書)/稚国玉(九段本書)/下照姫(九段本書)/下照媛(九段一書一)
先 下照姫(天神本紀)/下照姫命(地祇本紀)
梗概
 大国主神が多紀理毘売命を娶って生んだ神で、阿遅鉏高日子根神(迦毛大御神)の同母妹。別名を下光比売命(下照比売)という。「高比売命」の名で、天若日子を弔いにきた阿遅鉏高日子根神が、天若日子の父とその妻子に死人(天若日子)と見違えられたことに怒り飛び去る際に、兄の阿遅鉏高日子根神の名を明かす歌を詠んだ。本文に、この歌は夷振であるとある。
諸説
 高比売命は、兄の阿遅鉏高日子根神の「高日子根」に対する名とされる。また、阿遅鉏高日子根神は迦毛大御神でもあり、葛城の土地神(鴨の神)の妹となる。そのため、「高日子根」に対する高比売の名は葛城の鴨の神に近い名とされる。なお、阿遅鉏高日子根神が大国主神の子として神統譜に取り込まれた過程で、妹の高比売命も同様に大国主神の娘としての位置づけられたのではないかともいわれている。このほか、天若日子神話では阿遅鉏高日子根神の位置づけを語るために登場していると捉える説もある。
 天若日子神話では、基本的に下照比売の名であるが、歌を詠む際には高比売命と記されている。このことについて、高比売命の歌は明朗な雰囲気の漂う歌であり、夫の天若日子を喪って哭いていたはずの下照比売のままではそのような歌を詠ませる事が出来ないため、名を改めたという説がある。同時に、名を改めたことは、新たな存在になることを意味するともいわれる。また、高比売命(下照比売)が阿遅鉏高日子根神の名を歌うことは、重大な霊魂更新の祭儀に聖なる女性が関与していたことに対応するという説もある。なお、中世頃まで時代が降ると、下照比売が詠んだ歌の「弟棚機」という詞章を七夕二星と結びつける例(文献)が多く、中世の知識階層の人々にとっては、天若日子・下照比売とその歌が一つの連関の中で捉えられ、下照比売を織女星と結びつける場合が多いという。
 その他、「下光比売命」の項も参照。
参考文献
西郷信綱『古事記注釈 第三巻(ちくま学芸文庫)』(筑摩書房、2005年8月、初出1976年4月)
倉野憲司『古事記全註釈 第四巻 上巻篇(下)』(三省堂、1977年2月)
『古事記(日本思想大系)』(青木和夫・石母田正・小林芳規・佐伯有清校注、岩波書店、1982年2月)
松本信広『日本神話の研究』(東洋文庫、平凡社、1971年2月)
吉井巌「天若日子の伝承について」(『天皇の系譜と神話 二』塙書房、1976年6月)
熊谷春樹「葬礼と挽歌―天若日子葬儀と夷曲―」(『国学院雑誌』77-7号、1976年7月)
烏谷知子「喪山」(『上代文学の伝承と表現』おうふう、2016年6月、初出1985年1月)
出雲朝子「『天稚彦物語』と七夕二星」(『青山學院女子短期大學紀要』42、1988年11月)
松本直樹「迦毛大御神アヂスキタカヒコネ―古事記出雲神話の構想」(『国語と国文学』85巻3号、2008年3月)
岸根敏幸「古事記神話におけるアヂスキタカヒコネの位置づけ」(『福岡大学人文論叢』53,2021年12月)

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