國學院大学 「古典文化学」事業
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豊宇気毘売神
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豊宇気毘売神
読み
とようけびめのかみ
ローマ字表記
Toyoukebimenokami
別名
豊宇気比売神
登場箇所
上・国生み神生み
他の文献の登場箇所
旧 豊宇気比女神(陰陽本紀)
梗概
伊耶那美神が迦具土神を生み、陰部を焼かれて病み臥した際に尿から成った和久産巣日神の子神。
諸説
伊耶那美神が病み臥した際に嘔吐物・排泄物から生まれた神々の意義については主に、火山の噴火を表わすとする説、焼畑など農耕の反映とする説、五行思想の影響とする説、鎮火の伝承に由来するという説、香具山の祭祀に基づくとする説がある。『日本書紀』の各所伝との構想の相異も問題となり、それらの理解のしかたによって各神名の解釈にも幅が生じている。
豊宇気毘売神は、この一連の他の神々のように嘔吐物・排泄物から成ったのではなく、その最後に成った和久産巣日神の子として登場するのが特殊である。
その名義は、「豊」は美称とされ、豊穣の意とする説や、神的なものに冠する称辞とする説がある。「宇気」はウカに同じく、食物あるいは稲の意とされている。
大殿祭祝詞に同類の神が見え、「屋船豊宇気姫命〈是は稲の霊なり。俗の詞に、うかのみたま。今の世、産屋に辟木・束稲を以ちて戸の辺に置き、乃た米を以ちて屋の中に散らす類なり〉」と説明されている。
『古事記』における食物神は、既に大宜都比売神が登場しており、神格の重複が疑問視されるが、上記の大殿祭祝詞の注などに基づいて、豊宇気毘売神は、稲霊、すなわち食物のうち稲に限定された神格だとする見方もある。伊耶那美神の排泄物・嘔吐物から生まれた神々を農耕の生産過程と解する立場においては、その最後に、生産の神と考えられる和久産巣日神の子として、食物(稲)の霊である豊宇気毘売神が出現するのは、生産の成果である穀物(稲)の実りを表象しているとする説がある。
天孫降臨の段に見える登由宇気神、すなわち伊勢神宮外宮の祭神と同神と解釈するかどうかは説が分かれる。登由宇気神については、後世に竄入された記載と見る説もある。「登由宇気神」の項も参照されたい。
参考文献
山田孝雄『古事記上巻講義 一』(志波彦神社・塩釜神社古事記研究会編、1940年2月)
倉野憲司『古事記全註釈 第二巻 上巻篇(上)』(三省堂、1974年8月)
西郷信綱『古事記注釈 第一巻(ちくま学芸文庫)』(筑摩書房、2005年4月、初出1975年1月)
『古事記(新潮日本古典集成)』(西宮一民校注、新潮社、1979年6月)
大林太良「火の起源神話」(『神話の系譜―日本神話の源流をさぐる』青土社、1986年11月、初出1966年4月)
森重敏「諸神生出―古事記上巻について(三)―」(『国語国文』43巻10号、1974年10月)
菅野雅雄「豊宇気毘売神の出現」(『菅野雅雄著作集 第三巻 古事記論叢3 成立』おうふう、2004年5月、初出1977年6月)
吉田敦彦『縄文土偶の神話学』(名著刊行会、1986年4月)
青木周平「伊耶那美命化成の表現」(『青木周平著作集 上巻 古事記の文学研究』おうふう、2015年3月、初出1992年12月)
大野由之「豊受大神私考―古典資料より―」(『瑞垣』184、1999年10月)
高松寿夫「天降る織女」(『アジア遊学』27、2001年5月)
伊藤清司「食物起源神話」(『季刊悠久』101号、2005年7月)
中野裕三「豊受大神敬祭説をめぐって」(『神道宗教』199・200号、2005年10月)
豊石窓神
豊雲野神
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