國學院大学 「古典文化学」事業
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淤能碁呂島
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淤能碁呂島
読み
おのごろしま
ローマ字表記
Onogoroshima
別名
意能碁呂島
登場箇所
上・淤能碁呂島
上・国生み神生み
仁徳記・天皇と黒日売
他の文献の登場箇所
紀 磤馭慮島(四段本書・一書二・三・四・八)
旧 磤馭盧嶋(陰陽本紀)
梗概
伊耶那岐神・伊耶那美神の二柱が天つ神々の命を受けて生成した島。二柱が天の浮橋に立って、天つ神から賜った天の沼矛をさしおろして、塩をかき鳴らして引き上げると、矛の末から滴り落ちた塩が積もって淤能碁呂島となった。
また、仁徳記の仁徳天皇の歌にも淡島などと並んでその島名が詠み込まれている。
諸説
「淤能碁呂」は、おのずから凝り固まる意と解され、後の大八島国のように伊耶那岐神・伊耶那美神の二柱が結婚して生んだ島ではなく、おのずから出来た島であることを意味しているといわれる。
『古事記』や『日本書紀』本書・一書一では、矛を刺し下ろして掻いて、引き上げた矛先からしたたり落ちた塩が凝って淤能碁呂島が出来たとされる一方、『日本書紀』一書二・三・四では、矛を刺し下ろして掻いて、この島を探り当てたとされている。後者の方が伝承の古い形態を留めているとする説があり、島を探り当てるという発想は、英雄神が国土を釣り上げるポリネシアの島釣り神話や、原始の海洋の一巨岩が基盤になって万物が生成される、インドネシアやポリネシアの「原古の岩」神話など、南太平洋諸島各地の創成神話に近い関係があるという見方がされている。一方、モンゴルの神話にも、天降った神が鉄棒で原初海洋をかき回して大地が形成されたという神話があることが報告されており、淤能碁呂島神話の矛でかきまわす要素は、こうした北方のアルタイ系の神話のモチーフを受けているとする見方もある。前者の伝で、矛からしたたり落ちた塩が凝って島になったという内容は外国の神話には見られない要素とされ、この描写は、この神話を伝承した淡路の海人族らの製塩作業に基づく表現とする見方が提示されている。
また、『日本書紀』一書八では、この島を「胞」(え。胞衣のこと)として淡路洲が生まれたとされているが、これに対して本書・一書六・九では、淡路洲を「胞」として大日本豊秋津洲が生まれている。元々、淡路島の人々が自身らの島の生まれを語る伝承として伝えられたこの前者の伝が、中央の神話に受容された結果、王権の本拠となる秋津洲の出生譚に改変されて後者の伝が成立したというように考えられている。
仁徳記には、仁徳天皇が淡路島から眺望して詠んだ歌に「押し照るや 難波の崎よ 出で立ちて 我が国見れば 淡島 淤能碁呂島 檳榔(あぢまさ)の 島も見ゆ 離つ島見ゆ」(記・53)とある。島生み神話の伝承を背景として詠まれた国見歌と考えられており、淤能碁呂島や淡島は、王権の支配国土を代表する、大八島の「胞」となった神話的な島として詠み込まれているとする説がある。
淤能碁呂島の所在は、上記の歌では、淡島や檳榔の島(ともに比定地不詳)とともに淡路島から遠望されるものとして詠まれているが、具体的な位置は定かでなく、実在しない神話上の観念的な島とする説もある。伝承地や学説上の推定地は複数あり、和歌山県和歌山市の友ヶ島にある沖ノ島説(『新撰亀相記』)、兵庫県南あわじ市の沼島説(『日本紀私記』丁本、『釈日本紀』)、兵庫県姫路市の家島説(『神代巻口訣』)などが古来説かれている。
参考文献
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土橋寛『古代歌謡全注釈 古事記編』(角川書店、1972年1月)
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山路平四郎『記紀歌謡評釈』(東京堂出版、1973年9月)
次田真幸「天語歌の成立と大嘗祭」(『日本神話の構成と成立』明治書院、1985年11月、初出1974年10月)
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青木周平「淡島と淤能碁呂島」(『青木周平著作集 中巻 古代の歌と散文の研究』おうふう、2015年11月、初出1987年12月)
青木周平「伊耶那岐命と伊耶那美命」(『青木周平著作集 上巻 古事記の文学研究』おうふう、2015年3月、初出1992年12月)
工藤浩「オノゴロ嶋の位置をめぐる言説―『新撰龜相記』の所伝を中心に―」(『古事記年報』45、2003年1月)
谷口雅博「仁徳記53番歌と国生み神話」(『季刊悠久』146号、2016年9月)
淤縢山津見神
大穴牟遅神
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