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国之闇戸神

読み
くにのくらとのかみ
ローマ字表記
Kuninokuratonokami
別名
-
登場箇所
上・国生み神生み
他の文献の登場箇所
旧 国之闇戸神(陰陽本紀)
梗概
 伊耶那岐・伊耶那美二神の神生み段において、大山津見神と野椎神とが共に山・野に因って分担して誕生した八神(天之狭土神・国之狭土神・天之狭霧神・国之狭霧神・天之闇戸神・国之闇戸神・大戸或子神・大戸或女神)の第六。
諸説
 この場面には「天之」「国之」で対偶をなす神名が連なっていて、国之闇戸神は天之闇戸神と対をなしている。「天之」「国之」は、対偶の神名を構成するための称に過ぎないとする説もあるが、具体的な場所を象徴すると見て、山・野と捉える説や、地上から突き出て天空に接する所(山頂や崖)・地上と捉える説などがある。また、「天」「国」の対応が、天神の命によって行われる、国生みから神生みへと続く展開の上に、天上と国土との連続性を保証しているとする説もある。
 「闇戸」のクラは、暗い処の意で谷のこととする説や、単なる谷ではなく屹立して断崖絶壁をなした地形をいうとする説などがある。トは処の意とする説がある。クラは、『万葉集』に「うぐひすの鳴くくら谷にうちはめて焼けは死ぬとも君をし待たむ」(17・3941)と、「くらたに」が見え、ただの谷ではなく、断崖に挟まれた深い谷、などの解釈がある。現代でも、険阻な断崖絶壁をクラと称する方言が各地にある。或いは、岩壁は神座となるので、「座(くら)」が語源ではないかとする説もある。この神名におけるクラには、「闇」の表記の通り、暗いという意味合いも含まれているとする説もある。
 同時に生まれた八神の連関は、土(天之狭土神・国之狭土神)から霧が立ち(天之狭霧神・国之狭霧神)、霧によって暗くなり(天之闇戸神・国之闇戸神)、暗くなって惑う(大戸或子神・大戸或女神)、などといったつながりに捉える説がある。また、大山津見神と野椎神との山野の境界神的な性格と関わって、その境界にまつわる大地の神格化のイメージを持つと見る説がある。
参考文献
山田孝雄『古事記上巻講義 一』(志波彦神社・塩釜神社古事記研究会編、1940年2月)
倉野憲司『古事記全註釈 第二巻 上巻篇(上)』(三省堂、1974年8月)
西郷信綱『古事記注釈 第一巻(ちくま学芸文庫)』(筑摩書房、2005年4月、初出1975年1月)
『古事記(新潮日本古典集成)』(西宮一民校注、新潮社、1979年6月)
『萬葉集(4)(小学館新編日本古典文学全集)』(小島憲之 他 校注・訳、小学館、1996年8月)
砂入恒夫「古事記に於ける「天之」に就いて」(『古事記年報』13、1969年12月)
西宮一民「上代一音節語の研究―「門」の場合―」(『皇学館大学紀要』11、1972年10月)
野口武司「『古事記』神生みの段の左註「神參拾伍神」」(『古事記及び日本書紀の表記の研究』桜楓社、1978年3月、初出1974年6・8・10月)
青木周平「「神生み」段の表現」(『青木周平著作集 上巻 古事記の文学研究』おうふう、2015年3月、初出1991年5月)
西宮一民「「神参拾伍神」考」(『古事記の研究』おうふう、1993年10月、初出1992年4月)
毛利正守「古事記上巻、岐美二神共に生める「嶋・神参拾伍神」考」(『萬葉』144号、1992年9月)
戸谷高明「「持別而生神」」(『古事記の表現論的研究』新典社、2000年3月、初出1992年12月)

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