國學院大学 「古典文化学」事業
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国之久比奢母智神
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国之久比奢母智神
読み
くにのくひざもちのかみ
ローマ字表記
Kuninokuhizamochinokami
別名
-
登場箇所
上・国生み神生み
他の文献の登場箇所
旧 国之久比売女道神(陰陽本紀)
梗概
伊耶那岐・伊耶那美二神の神生みにおいて、水戸の神、速秋津日子神・速秋津比売神が河・海に因って持ち別けて誕生した八神(沫那芸神・沫那美神・頬那芸神・頬那美神・天之水分神・国之水分神・天之久比奢母智神・国之久比奢母智神)の第八。
諸説
神名の「久比奢母智」の読みは、「奢」を濁音としてクヒザモチとされることが多いが、濁音の根拠は無いとして、清音にクヒサモチとする説もある。
「久比奢母智」の名義は「くみ(汲)ひさご(瓠)もち(持)」の意とする説がある。ヒサゴは水を汲む器で、『和名類聚抄』に「杓 唐韵、―〈音酌。比佐古。〉斟水器也。」とある。ヒサゴの語は、古くはヒサだけで瓠を意味したという説もある。鎮火祭祝詞に「更に生める子、水の神・匏・川菜・埴山姫、四種の物を生み給ひて、此の心悪しき子の心荒びるは、水・匏・埴山姫・川菜を持ちて鎮め奉れと、事教へ悟し給ひき」とあり、火神を鎮める具の一つとして「匏(ひさこ)」が挙がっている。神楽の採物にも「杓(ひさご)」があり、祭具にも用いられた。その神楽歌の詞章には、本「大原やせがゐの清水杓もて鶏は鳴くとも遊ぶ瀬を汲め遊ぶ瀬を汲め」、末「我が門の板井の清水里遠み人し汲まねば水さびにけり水さびにけり」とある。また、クミヒサゴの約でなくクヒヒサ(杙瓠)の約と考える説や、モチを「持」でなくオホナモチなどと同じモチで尊称と解する説がある。その神格は、瓠の水を汲む働きと関連して、水を分配する神と捉える説がある。
神名に冠せられた「国之」は、天之久比奢母智神の「天之」と対をなす。この語は、対偶を構成するための称に過ぎないとする説もあるが、水が天から降ってくる作用と国土から湧出する作用とを表しているとする説や、「天」を水源に近い河に、「国」を陸に近い海に配した命名とする説、また、「天」「国」の対応が、天神の命によって行われる、国生みから神生みへと続く展開の上に、天上と国土との連続性を保証しているとする説もある。
同時に生まれた八神の連関は、河と海の二神の相打って生じる泡に沫那芸神・沫那美神が生じ、その水面に頬那芸神・頬那美神が生じ、水が蒸発して天に昇り雨となって国土に下り湧き出す作用を天之水分神・国之水分神が司り、天之久比奢母智神・国之久比奢母智神がそれを補助して水を分かち与える、という水の恵みを讃えたものとする説がある。
参考文献
山田孝雄『古事記上巻講義 一』(志波彦神社・塩釜神社古事記研究会編、1940年2月)
倉野憲司『古事記全註釈 第二巻 上巻篇(上)』(三省堂、1974年8月)
西郷信綱『古事記注釈 第一巻(ちくま学芸文庫)』(筑摩書房、2005年4月、初出1975年1月)
『古事記(新潮日本古典集成)』(西宮一民校注、新潮社、1979年6月)
砂入恒夫「古事記に於ける「天之」に就いて」(『古事記年報』13、1969年12月)
野口武司「『古事記』神生みの段の左註「神參拾伍神」」(『古事記及び日本書紀の表記の研究』桜楓社、1978年3月、初出1974年6・8・10月)
青木周平「「神生み」段の表現」(『青木周平著作集 上巻 古事記の文学研究』おうふう、2015年3月、初出1991年5月)
西宮一民「「神参拾伍神」考」(『古事記の研究』おうふう、1993年10月、初出1992年4月)
毛利正守「古事記上巻、岐美二神共に生める「嶋・神参拾伍神」考」(『萬葉』144号、1992年9月)
戸谷高明「「持別而生神」」(『古事記の表現論的研究』新典社、2000年3月、初出1992年12月)
『神楽歌 催馬楽 梁塵秘抄 閑吟集(新編日本古典文学全集)』(臼田甚五郎 他 校注・訳、小学館、2000年12月)
国忍富神
国之闇戸神
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