國學院大学 「古典文化学」事業
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阿須波神
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阿須波神
読み
あすはのかみ
ローマ字表記
Asuhanokami
別名
-
登場箇所
上・大年神の系譜
他の文献の登場箇所
万 阿須波乃可美(20・4350)
祝 阿須波(祈念祭、六月月次)
神名式 足羽神社(越前国足羽郡)
梗概
大年神の系譜中に見える。大年神が天知迦流美豆比売を娶って生んだ神々(奥津日子神・奥津比売命・大山咋神・庭津日神・阿須波神・波比岐神・香山戸臣神・羽山戸神・庭高津日神・大土神)の内の一神。
諸説
大年神の系譜中の神々については、農耕や土地にまつわる神を中心としたものと捉えられ、民間信仰に基づく神々とする説や、大国主神の支配する時間・空間の神格化とする説がある。渡来系の神々が含まれているところには、渡来系氏族の秦氏の関わりが指摘されている。また、この系譜の、須佐之男命・大国主神の系譜から接続される本文上の位置に不自然さが指摘されており、その成立や構造について、秦氏の関与や編纂者の政治的意図が論じられている。一方、『古事記』全体の構成からこの位置に必然性を認める説もある。
阿須波神は、屋敷の神や庭の神と捉えられることが多い。「足磐(あしいは)」の約「あしは」が転じて「あすは」になったと捉えて、足場の意とする説や、家屋の基礎が堅固である意とする説、また、『万葉集』に「庭中の 阿須波の神に 小柴さし 我は斎はむ 帰り来までに」(20・4350)という例が見えることから、庭に小柴を立てて降神する神籬祭祀の神であり、旅の安全を守る神として信仰されていたとする説がある。また、越前国に足羽郡があり、同郡に「足羽神社」(『延喜式』神名帳)があり、郷名に足羽郷(『和名類聚抄』二十巻本)が見える。このことから、元来は現在の福井県福井市足羽地域の土着の神で、葦葉の神、あるいは、土の神であるとする説や、元来は同地に居住した足羽氏の奉斎した氏神であったが、同氏が衰退して司祭権が渡来系氏族に移り、大年神系譜の記載に至ったとする説もある。
また、『延喜式』践祚大嘗祭・抜穂条に、悠紀田・主基田の斎院に祭る神八座として、『古事記』で兄弟神とされている「庭高日神」「阿須波神」「波比伎神」 も挙がっており、これらと一連の、斎院の敷地に関わるであろうとする見解もある。
参考文献
西郷信綱『古事記注釈 第三巻(ちくま学芸文庫)』(筑摩書房、2005年8月、初出1976年4月)
『古事記(新潮日本古典集成)』(西宮一民校注、新潮社、1979年6月)
志賀剛「庶民的な宮中三神―座摩・波比祇・阿須波の三神―」(『式内社の研究 第1巻 概論・南海道』雄山閣、1987年3月、初出1960年5月)
益田勝実「庭中の阿須波の神に木柴さし」(『日本文学』17巻9号、1968年9月)
市村宏「庭中の阿須波の神」(『次元』15巻6号、1969年6月)
上田正昭「大年神の系譜」(『古代伝承史の研究』塙書房、1991年5月、初出1980年4月)
西牟田崇生「八神の一考察―大嘗祭斎院八神と神祇官西院八神について―」(『國學院雜誌』91巻7号、1990年7月)
角鹿尚計「足羽神社と阿須波神」(『日本古代氏族の祭祀と文献』岩田書院、2021年8月、初出1996年3月)
志水義夫「大年神系譜の考察」(『古事記生成の研究』おうふう、2004年5月、初出1997年10月)
虎尾俊哉『延喜式 上(訳注日本史料)』(集英社、2000年5月)
藤本頼生「『古事記』神代巻に登場する異名同種神の解釈の再整理と地域分布―「阿須波神」と「波比岐神」をめぐって―」(『古事記學』6号、2020年3月)
葦原色許男神
阿遅志貴高日子根神
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