國學院大学 「古典文化学」事業
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木花知流比売
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木花知流比売
読み
このはなちるひめ
ローマ字表記
Konohanachiruhime
別名
-
登場箇所
上・須賀の宮
他の文献の登場箇所
-
梗概
須佐之男命の系譜中に見える。大山津見神の娘で、八島士奴美神との間に布波能母遅久奴須奴神を生む。
諸説
木花知流比売の名義について、「木花」は、文字通り木の花とする説や桜の花を指すとする説がある。桜を穀霊の依り代となる神木と捉え、その咲き散りによって年穀の豊凶を占う木とされてきたとする説に基づいて、この神名を、山の神(大山津見神)の農耕神としての霊能を受け継いでいることを示すものと捉える説がある。一方、木花知流比売や木花之佐久夜毘売の神話の内容に桜の要素は見いだせないとして、桜との関係を否定する説もある。
木花知流比売と木花之佐久夜毘売とは、ともに大山津見神の娘で、名前の散る・咲くが対応する。両者は登場する場面が異なり、神話上の関係性は薄いが、邇々芸命が木花之佐久夜毘売との結婚によって皇統の繁栄を得たのに対して、八島士奴美神と木花知流比売との結婚は、国つ神の系譜が天下を支配する正統を継承しないことを象徴するもので、散るという神名にはそうした否定的な意味が込められているとする見方がある。
この神は『日本書紀』には見られない。『粟鹿大明神元記』(和銅元年(708)の上申とされる粟鹿神社の祭神の系図)には「木花知利比売」と見える。
参考文献
西郷信綱『古事記注釈 第二巻(ちくま学芸文庫)』(筑摩書房、2005年6月、初出1975年1月)
倉野憲司『古事記全註釈 第三巻 上巻篇(中)』(三省堂、1976年6月)
『古事記(新潮日本古典集成)』(西宮一民校注、新潮社、1979年6月)
『古事記(日本思想大系)』(青木和夫・石母田正・小林芳規・佐伯有清校注、岩波書店、1982年2月)
中西進『中西進著作集 1 古事記をよむ 一』(四季社、2007年1月、初出1985年11月)
櫻井満「「花散らふ」と「み雪ふる」の発想」(『櫻井満著作集 第5巻 万葉びとの憧憬』おうふう、2000年6月、初出1961年7月)
折口信夫「花の話」『折口信夫全集 第二巻』(中央公論社、1965年12月)
斎藤正二『日本人とサクラ―新しい自然美を求めて』(講談社、1980年5月)
菅野雅雄「神々の系譜」(『菅野雅雄著作集 第四巻 古事記論叢4 構想』おうふう、2004年7月、初出1982年9月)
菅野雅雄「須佐之男命の系譜」(『菅野雅雄著作集 第四巻 古事記論叢4 構想』おうふう、2004年7月、初出1984年3月)
瀬間正之「『粟鹿大明神元記』は上代語資料となり得るか―本文とその国語国文学的批判―」(『古典研究』16号、1989年7月)
三浦佑之「大国主神話の構造と語り―『古事記』の口承性―」(『古事記研究大系8 古事記の文芸性』高科書店、1993年9月)
福島千賀子「コノハナノサクヤビメ試論―桜の聖性をめぐって―」(『国文目白』33号、1994年1月)
阿部誠「神阿多都比売と木花之佐久夜毘売―神名の接続と神話の構想―」(『古事記の神々 上 古事記研究大系5-Ⅰ』高科書店、1998年6月)
姜鐘植「スサノヲ系譜「十七世神」について―系譜と説話の関わりという観点から―」(『井手至先生古稀記念論文集 国語国文学藻』和泉書院、1999年12月)
小松和彦「桜と民俗学」(『神なき神代の民俗学』せりか書房、2002年7月、初出2001年4月)
福島秋穗「八嶋士奴美神より遠津山岬多良斯神に至る神々の系譜について」(『紀記の神話伝説研究』同成社、2002年10月、初出2002年1月)
事代主神
木花之佐久夜毘売
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