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建布都神

読み
たけふつのかみ
ローマ字表記
Takefutsunokami
別名
建御雷之男神
豊布都神
登場箇所
上・伊耶那美命の死
他の文献の登場箇所
旧 建布都神(陰陽本紀)
神名式 建布都神社(阿波国阿波郡)
梗概
 建御雷之男神(建御雷神)の別名。また、豊布都神ともいう。伊耶那美神が迦具土神を生んだことによって神避りし、伊耶那岐神が迦具土神の頸を斬った際、刀の本についた血が湯津石村に走りついて成った三神(甕速日神・樋速日神・建御雷之男神)の第三。
諸説
 神名のタケは勇猛の意の美称とされる。フツの語は、石上神宮に祭られる霊刀、佐士布都神やその別名の布都御魂、また『日本書紀』で武甕槌神とともに行動する経津主神などと共通し、刀剣の神としての呼称であることが知られる。『日本書紀』では、フツノミタマを「韴霊」と書く。中国の字書『玉篇』『広韻』などに「韴」の字義が「断声」とあることから、フツの語は、現代語のプッツリのように、物を断ち切ることの形容と考えられている。そこから敷衍して、悪魔を断ち切ることを意味すると解する説もある。また、フツを、神霊の降臨にまつわる光や輝きを意味すると解して、古代朝鮮語で輝く意味を持つpurkと同系統の語と捉える説や、漢語「祓」で表される除災招福の儀礼を意味するとする説などもある。
 『先代旧事本紀』天孫本紀には、崇神天皇の治世に、伊香色雄命が建布都大神社を大倭国(大和国)山辺郡の石上邑に遷したのが、石上大神(石上神宮)だという伝承を載せているが、『古事記』の建布都神との関係は定かでない。
 また『延喜式』には阿波国阿波郡に「建布都神社」が見える。比定される神社は、徳島県阿波市の市場町香美「建布都神社」と土成町郡「建布都神社」とが候補で、ともに建布都神を祭っている。
参考文献
倉野憲司『古事記全註釈 第二巻 上巻篇(上)』(三省堂、1974年8月)
西郷信綱『古事記注釈 第一巻(ちくま学芸文庫)』(筑摩書房、2005年4月、初出1975年1月)
『古事記(新潮日本古典集成)』(西宮一民校注、新潮社、1979年6月)
三品彰英「フツノミタマ考―刀剣文化の伝来と日鮮建国神話の研究―」(『建国神話の諸問題』平凡社、1971年2月、初出1932年11月~1933年5月)
松村武雄『日本神話の研究 第二巻』(培風館、1955年1月)第四章
菅野雅雄「上巻記載の「亦名」」(『菅野雅雄著作集 第一巻 古事記論叢1 系譜』おうふう、2004年1月、初出1969年7月)
松前健「石上神宮の祭神とその奉斎氏族」(『松前健著作集 第3巻 神社とその伝承』おうふう、1997年12月、初出1985年1月)
『式内社調査報告書 第二十三巻 南海道』(式内社研究会編、皇学館大学出版部、1987年10月)
中村啓信「フツの神とフツヌシの神」(『古事記の本性』おうふう、2000年1月、初出1997年10月)

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