江戸時代中期の国学者・賀茂真淵による『万葉新採百首解』(京坂二書肆版)の翻刻テキスト。
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(第一六首) 巻之八 同し人【三首の中】歌の左に天平十五年癸未秋八月詠ル《二》物ノ色ヲ《一》 棹牡鹿之、朝立野辺之、秋芽子尓、玉跡見左右、置有白露(一五九八) さをしかの、あさたつのべの、あきはぎに、たまとみるまで、おけるしらつゆ
まはき原の朝露、さながら玉を敷見えてあざやかなる野に、鹿〔一六ウ〕 のたつけしき絵にもうつし得がたし○さをしかのさは発語にて、 をしかは牡鹿也、然るを此集には狭尾牡鹿さをしか、佐乎牡鹿さをしかなどゝ書て、 牡鹿の二字をたゝしかとのみよむことゝせり、仍てこゝも棹さを牡し鹿かとは 書たり、且棹の仮字は佐乎にてかなふ、故に字を借たり