江戸時代中期の国学者・賀茂真淵による『万葉新採百首解』(京坂二書肆版)の翻刻テキスト。
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(第二〇首) 同し巻 詠花 真葛原、名引秋風、吹毎尓、阿太乃大野之、芽子花散(二〇九六) まくすばら、なひくあきかぜ、ふくごとに、あだのおほのゝ、はぎがはなちる
秋の草花なり みるが如きありさま也、葛は葉ひろなれば、吹風の先みゆるもの故 にかく詠るならん○あだの大野は和名抄に、大和国宇智郡阿陀とある〔一九オ〕 所也、巻一に天皇遊《二》猟内うち野のに《一》とあり内野とは即、宇智郡にあるゆゑに かく云なり、且大野とは広き野ゆゑにも云べけれど、はた御猟野なれ ば御オホ野ノてふ心も侍らん、篠浪の大山守とよめるは、天智天皇大津の宮の 時にて都近き御山なれば云し事なり、其外公の御物をは大おほ何なにと云也