江戸時代中期の国学者・賀茂真淵による『万葉新採百首解』(京坂二書肆版)の翻刻テキスト。
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(第七二首) 巻之九 幸ス《二》吉野ノ離宮ニ《一》時歌【二首の中】 落瀧知、流水之、磐触、与抒売類与抒尓、月影所見(一七一四) おちたぎち、なかるゝみづの、いはにふれ、よどめるよどに、つきのかげみゆ
こは藤原の御時の御幸ならんか、歌のさま其頃とみゆ たぎりて流るゝ川の月影は、岩間の淀みにのみふれる物なるを、其まゝ によくいひとりつ○落瀧知流と云は、知ちは利りと音の通ひて落おち多た岐ぎ利り流なが るゝとつゞく也、瀧つ品川と云は、つとちと通ひて沸たぎる、品川とつゞく也、相対へ てしるべし【此津は例の助辞とは異也、大滝は沸たてふ語なり、故に多芸と/濁る字に書り、且其沸るを体にいひなして、多芸とばかりもいふなり】触を ふれともいへど、かゝる所にてはふりてとよむ事と見えて、略せる也、ふりといふ〔五七ウ〕 時はふれての意こもり侍れば委か也、古語は皆さることにて、思の外に委ぞかし