江戸時代中期の国学者・賀茂真淵による『万葉新採百首解』(京坂二書肆版)の翻刻テキスト。
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(第九一首) 同し巻 麻績王聞《レ》之感傷メ(ママ)(「シテ」ヵ)和コタヘ玉ヘル歌ウタ【和はこたへ歌なり】 空蝉之、命乎惜美、浪尓所湿、伊良虞能嶋之、玉藻刈食(二四) うつせみの、いのちをおしみ、なみにぬれ、いらごのしまの、たまもかりをす〔七〇ウ〕
右のあまなるや、しか〳〵とよめるをうけ、こたへてまことにあはれなるあり さまをよみ給へり、歌はかくありのまゝなるをぞ、まはしきことはし て、つゞくる事と思はゞ、たれもやすくよみ出つべし○食の字はをすと よみて、物くふことなり、上の歌の時は人の詞ゆゑに、刈ますといひ、是 は自なれば、藻をかりくひて命をつきぬとよみ給へり、今本に此 食をますとよみたるは、惣じて食をはをし、をす、と云こと古の常なるをや