江戸時代中期の国学者・賀茂真淵による『万葉新採百首解』(京坂二書肆版)の翻刻テキスト。
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(第一〇〇首) 巻之十八賀イハフ《二》陸奥国出ヲ《一レ》金 詔書歌 須売呂伎能、御代佐可延牟等、阿頭麻奈流、美知乃久夜麻 尓、金花佐久(四〇九七) すめろぎの、みよさかえんと、あづまなるみちのくやまに、こがねはなさく 万葉新採百首解【畢】
聖武紀に、天平廿一年四月に、陸奥小田郡黄金九百両を得て、国守 従三位百済王敬福か貢せしをよろこひ給ふ詔書あり、其事を、天平感 宝元年、五月大伴家持越中守にて聞賀るなり、事は紀また長 歌にくはし 山に桜花などの咲になぞらへて、みちのく山にこかね花咲といへるは、咲と さかゆるとは本同じ語にて、集中に春の花のさかゆる時にとよめるが如し、 依て上に、みよさかえんといひたる、下によくにほひ合たり○みちの〔七七ウ〕 く、小田郡の山を直に、みちのく山といへるは、古の常にて、防人の歌にさか みつ(ママ)むさしわ(ママ)などいへる如く、古今集にいなばの山のみねに生ると有 因幡の国の山といへる、右と同じきを後人意得ず、こと所をおもふな どは古に委しからぬなり