江戸時代中期の国学者・賀茂真淵による『万葉新採百首解』(京坂二書肆版)の翻刻テキスト。
目次を開く 目次を閉じる
(第一三首) 秋 巻之十 七夕なぬかのよ 七夕の二字はなぬかのよとよむ也、同巻に七夕耳相人之なぬかのよのみあふひとの云々 天河、遠渡者、無友、公之舟出者、年尓社待(二〇五五) あまのかは、とほきわたりは、なけれどもきみがふなでは、としにこそまて
月かさね、吾思ふ妹にあへる夜は、此七夕つぎこせぬかもとあり、七夕の字を たなはたとよむは後俗のわざ也、凡たなばたつめとは女星にて棚機女 又織女とも書にてしるべし、又ひこぼし彦星と書て、此二星の逢夜なる を、七夕の字を唯たなばたと読ては、理ことはりなければ、古人はしかよまぬなりけり ことはり明らかにて、よくとゝのひたる歌なり、さて天漢あまのかはをばかく遠き わたりはなくとも、みづなし川とて水もなくとも八十の船津とも、白浪の立 とも、さま〴〵にいひつれば、今もいかにもいひなしつべし〔一四ウ〕