江戸時代中期の国学者・賀茂真淵による『万葉新採百首解』(京坂二書肆版)の翻刻テキスト。
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(第三〇首) 巻之十一寄テ《レ》物ニ陳フ《レ》思ヲ 紅之、欄引道乎、中置而、妾哉将通、公哉将来坐(二六五五) くれなゐの、すそひくみちを、なかにおきて、われやかよはん、きみやきまさん
これもたゞ何に寄てふに同しきを、ひとつの家集 にはかく書たるを、其儘しるしたりとみゆ、これはた一人の手に集しな らぬを、しるひとつなり これは女の歌なり、よりて紅のすそ引とよみたり、扨巻十二に、君は不来 われは故なみ、立波の、しる(ママ)〳〵わびし、かくてこしとや、とよめるとはことにて、 古今に、君やこん、われや行んの、いさよひにとよめるが如し、相通んにさ のみ障なき中にての歌なるべし、且女の通へる事も昔は有けん、さる 意なる歌も少からず