江戸時代中期の国学者・賀茂真淵による『万葉新採百首解』(京坂二書肆版)の翻刻テキスト。
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(第三六首) 巻之十 春 寄ル《レ》鳥ニ 春之在者、伯労鳥之草具吉、雖不所見、吾者将見、遺君之当波(一八九七)〔二九ウ〕 はるされば、もずのくさぐき、みえずとも、われや(ママ)みやらん、きみがあたりは
思ふ君がすむ辺りは遠ければ、見るに見られねともなつかしければ、猶 もみやらんといふが切なる也、扨そのさだかにみえぬたとへに、春の野など草 はのやゝしげき頃はも、春の鳥のくゞりては物あさり、又出てはくゞるを いへり○草くさ具ぐ吉きはくさくゞる也、具ぐ利りの反吉きなればつゝめて云り【然れ/ば吉 を濁を(ママ)上の心(ママ)を隔(ママ)るは/連声のならひなり】集中に、藤なみの花をたちくゝ、ほとゝぎす、又あし引の木の間立は、巻十一ほとゝぎすといへるにも立くく也、古事記に加具かく土を斬給ふ 云々集ル《二》御刀之手上ニ《一》血自リ《二》手漏(ママ)《一》出所ル《レ》成神名【訓漏/久伎】云々又少すくな彦ひこ名なの神のちい さきことを、御み祖おやの神のたまはく、自手倶久伎斯子たぐくきしこ也、この外も多き詞 なるを、後の人はいかに思ひまどひけん、あらぬ事に訳とくも侍るなり 《上欄》伯労は鵙なり/毛詩に七月/鳴鵙礼記に/中夏鵙初鳴/とあり