江戸時代中期の国学者・賀茂真淵による『万葉新採百首解』(京坂二書肆版)の翻刻テキスト。
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(第三七首) 巻之十二 寄テ《レ》物ニ陳フ《レ》思ヲ 御猟為、雁羽之小野之、櫟柴之、奈礼波不益、恋社益(三〇四八)〔三〇オ〕 みかりする、かりばのをのゝ、ならしばの、なれはまさらで、こひこそまされ
御猟は、すへらきの御かり、雁かり羽ばは借字にて狩かり場ば也、扨其狩場の小野 にある、ならしばといひてこはなれはといはん料のみ、歌の意は下の句につき て思ふ、人に馴むつふとはなくて、いよ〳〵恋しさのみまさりつゝ、かひなしと 云り○此檪はなればと、いはん料なれば、ならしばとよむべきには 定りつれど、此字はおぼつかなし、楢の草書と、檪の草書と誤れるにや、 和名抄に檪子【和名以/知比】又巻十六檪いちひ津づの板橋てふも、同しくよみ来れり、 又用明紀に舎人迹とみ見赤梼いちひ【此云伊/知比】これは字書に橿かしの類とせらるゝに よれば、俗にあかゞしと云是なるべし、これを同訓とするは覚束なし、 集中に市柴と書たる所もあれば、伊い智ち比ひを略せるとみゆ