江戸時代中期の国学者・賀茂真淵による『万葉新採百首解』(京坂二書肆版)の翻刻テキスト。
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(第五九首) 潮左為二、五十等児乃嶋辺、榜船荷、妹乗良六鹿、荒嶋廻乎(四二) しほさゐに、いらごのしまべ、こぐふねに、いものるらんか、あらきしまわを
また同し阿胡あこの行宮かりみや近きいらごの嶋辺に、舟乗すらん妹の満くる汐に、 波のたゝんをり、いかにおそろしと思ふことあらんとなり、此度の様を三 首にていひ尽せり、先のは宮女たち、中のはまろきみたち、末のは懸想せ る女の供奉せしを思へる成べし、凡いもてふは記にも万葉にも、凡の女をいは ず、妻または心かけたる女を妹とはいへり○潮さゐはみち来る潮の際 なり、潮は風立波、さわぎつゝみゆるものなれは也、さて和芸の反為なれば さわぎをさゐとはいへり、巻十一に牛窓の浪の塩しほ左さ猪ゐ島しま響ひゞき云々巻十五に、 潮干なば又も吾こん、いざ行ん、沖おき津つ志しほ保さ佐ゐ為高く立来ぬ、此外にも 同し意にて、仮字をみな為ゐ猪ゐなど書る歌あまたあり○嶋しま廻わは嶋の めぐりほとりのことにて、浦廻、浦輪、など書たり、後人嶋半など書は誤也〔四八オ〕 《上欄》後世はくさ〳〵/の心も一首に/ていはんと/するゆゑに/すかたもわ/ろく心もいや/しきそかし/只一首は一意/にて有へし/古は事の多/けれは数首/よみしなり 《上欄》後人これを/潮会の意/と云はかなも/違ひ理もな/し且際のか/なも佐和ぐ/也