江戸時代中期の国学者・賀茂真淵による『万葉新採百首解』(京坂二書肆版)の翻刻テキスト。
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万葉新採百首解巻之下〔五四オ〕 遊覧 (第六七首) 巻之七 詠《レ》山 昔者之、事波不知乎、我見而毛、久成奴、天之香山(一〇九六) いにしへの、ことはしらぬを、われみても、ひさしくなりぬ、あめのかくやま
これも其もとは、設てよめるにはあらぬを一つの家集にかく書し也けり 天の香山は、神代よりいひ伝へて、初国しらしゝ御代にも、此山をことあげ し給へりし事聞え来ぬれば、幾代々をへしてふことは、えいひもし らず、且我老はつるまて見ることも、いく久にかなりつらんと、神さびに たる山につけて、わがよはひの高きをもいふ也、古今に久しくなりぬ 住よしの、とあるは所をかへしのみにて、たゞ同し歌なり、またいたづら に代にふる物と、高砂の云々、高砂の松も昔の、友ならなくに、など詠るも 皆此歌をもとゝせる成べし〔五四ウ〕