江戸時代中期の国学者・賀茂真淵による『万葉新採百首解』(京坂二書肆版)の翻刻テキスト。
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(第六八首) 同じ巻 同じ題 動神之、音耳聞、巻向之、檜原山乎、今日見鶴鴨(一〇九二) なるかみの、おとのみきゝし、まきむくの、ひはらのやまを、けふみつるかも
巻向の日ひ代しろ宮は、いにしへ景行天皇のおはしましければ、此檜原の 山も名高く聞え来りしを、けふ初めてみつるといふ意なり、初の句 は仁徳紀に【大和歌に髪/長媛のこと也】かみのこと聞えしかどもあひ枕まく、とあるも同じ く音にきこえたるを、つよくいはん料の冠辞なり、音にのみ聞ともよめれ ど、巻六に鳴神乃、音おと耳のみ聞きゝ飾し、三芳野乃、ともよめるが例にて、おとのみ聞しとは よみつ○巻向山は、神名式にも大和国城上郡に有、さて巻向、巻目、纒向、な ど書たる字につきて、さま〴〵によめるはいかにぞや、古事記に麻岐牟久まきむくてふ かなあれば、まきむくとよむべき也、姓氏録に、巻椋、と書たり